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「いやだ……何よあれ。ニヤニヤしてほんと気持ち悪い」
拓人が、美しい眉を歪ませるのを見ながら、香澄は思ってしまった。
(そんな風にdisれるのは、先輩だからだと思う……)
拓人が言う気持ち悪い顔ですら、香澄にとってはキラキラと美しい。
そんな人だから、涼を好きになる人はどんどん現れる。
その中には涼にとって自分よりも合う、完璧な女性がいる可能性の方がずっと高い。
いつも香澄は、そんな不安に怯えているのだった。
「ねえ香澄」
その時、涼が唐突に香澄に声をかけてきた。
「な、なんですか?」
自分の思惑を大暴露されてしまった後の、次の呼びかけだ。
一体何を言われるのかと、香澄は体をこわばらせながら待機した。
まるで、死刑宣告を待つかのように。
ところが、その次に出てきた涼の言葉は、香澄だけでなく拓人にとっても右斜上を行きすぎるものだった。
「出産後、君の体が落ち着いてからでいいんだけど……モルディブに行くとかどう?」
「「は?」」
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