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「何、明後日の方向見てるのよ」
「いや、まあ……うん……」
涼は、ごほんと咳払いをしてから
「そういうことなので洋子さん」
「はいはい、楽しみにしてますよ〜あ、香澄ちゃん」
洋子が涼のスマホのスピーカー越しに香澄に話しかけてきた。
「産後の骨盤矯正だけど、私も良いところ探しておくから一緒に行きましょうね」
「は、はい……」
今、まさにそれに近しい話をしており、非常に気まずい状態だった。
なのでできれば、この場でのその話は、避けたかった香澄だったが、洋子に悪気が一切ないのは分かっていたので
「続きは通話で細かくお話ししたいです」
と、良い形で終わるように話を切った。
これは、コミュ障香澄があまりにも電話の切り方が下手すぎたので、拓人が教えた処世術の1つだったりする。
そうして、洋子と涼の間での通話が切れたところで。
「で、あんた何よ。洋子さんに赤ちゃん預けて、2人だけで海外トンズラしようって考えてたわけ」
「………………ちが」
「違うんだったらそんなに間空かないわよ」
「とにかく、洋子さんもこう言ってくれていることだし、香澄」
「は、はい」
「出産後に、僕が心変わりなんかすることはないってたっぷり教えてあげるから」
「そ、それって……」
「はいストップ!!私の前でやめてちょうだい!!」
拓人が空気を一気に断ち切った。
「ねえ、香澄。あんたはこいつとハネムーン行きたい?」
「えっ!?」
香澄にとっては、出産後どうすれば涼に嫌われないかだけがキーポイントだった。
ハネムーンなんて、考えたこともなかったのだ。
(最初話題、なんだったっけ……)
「どうなの香澄」
「どうって……」
「あんたが、どうしてもこいつとハネムーン行きたいって言うなら、私も協力してあげるわよ」
「「は?」」
今度は涼と香澄がハモった。
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