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「どういうこと……かな?たっくん……?」
「言葉の通りよ。私も、洋子さんと一緒に行くって言ってんのよ。あんた達のハネムーン」
「…………冗談はその格好だけにしてくれる?」
「格好も言葉も本気の本気だけど」
「それならなお悪いんだけど」
「何よ!さっきまで『香澄が……ゲームのキャラに取られるかも』って人の家に来てぴーぴー泣いてたくせに」
「別に泣いてないけど。たっくんの気のせいじゃない?」
「きー!さっきの泣き顔!録画して香澄に送りつけてやりたかったわ……!!」
兄弟喧嘩がヒートアップしそうだったので「あのぉ……」と香澄は手を挙げた。
この2人の喧嘩は、最初の頃は始まるたびに「どうしよう」と狼狽えるだけの香澄ではあったが、それが何度も繰り返されれば慣れてきてしまうもので。
今では
(どのタイミングで声をかければ聞いてくれるだろうか)
と冷静に考えられるようにはなっていた。
ちなみに、今香澄が狙っていたのは、拓人が大声で涼を詰りまくってから、呼吸のために一息ついた瞬間。大体ここで必ず間が空くので、香澄の声を聞いてもらいやすかったのだ。
「どうしたのよ、香澄」
「あのー先輩はつまり……」
この言葉を自分で言うことは躊躇いたくなったが、状況が状況なので仕方がないと、香澄は腹をくくった。
「つまりその……涼先生と私のはね……なんとか」
「なんでそこで言葉濁すのよ。ちゃんとハネムーンって言いなさいよ」
(簡単に言えるなら、濁そうとしません……!)
「だから、はねなんとかに一緒に行くんですか?」
「当然でしょう。洋子さん1人に赤ちゃん任せるとかあんた……世間様の目が怖いわよ」
そう言うと、拓人はびしっと涼を指差しながらこう宣言した。
「いい?私の目の黒いうちは、うちの香澄を炎上案件に巻き込ませるようなこと絶対させないんだから!ハネムーンも、最低でも私と洋子さんの分も合わせて、ちゃんとファーストクラス、もしくはプライベートジェット予約しなさい!」
「ふぁ!?ぷ!?」
そんな単語が存在するのは、TL小説案件の中だけかと、香澄は思っていたので耳を疑った。
「そうでなければ、まずあんたたちのハネムーンなんて認めないわ!いいわね!」
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