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「え?」
涼は香澄の、自分のスマホを押さえている手の上に自分の手を置いた。
「君が僕を信じられるようになる方法と、同じことを、僕に見せてくれないか?」
そう言われて、香澄は考えてみた。
(あれ、どうするべきなの?)
二次元へ注ぐ愛の証明は、用意された完璧なハッピーエンド。スチルもストーリーも甘々で胸キュンできるものがご褒美で用意されている。
さらに、課金の成果というものはアニメ化や映画化、グッズにイベントと三次元の世界にも派生してくる。
それを見て、香澄を始め、そのコンテンツのファンは思うのだ。
「ああ、課金してよかった」
つまり、愛はお金で表現し、その結果さらなる萌えを享受できるのが約束されていたからこそ、愛することを恐れずできた。
だが……じゃあ涼に対してはどうだったのか。
香澄は、確かに嬉しかった。
いつも自分の名前を優しく呼んでくれることも、記念日でもないのにプレゼントをくれることも、ことあるごとに抱き寄せてキスしてくれることも。
全部、幸せだと思っていたのだ。その瞬間は。
でも、それも束の間で、さっと油断すれば不安が押し寄せる。
それはどうしてなのか、香澄は1つの答えに気がついた。
「どうすれば、先生が私にくれるという愛を形に残せるんだろう……?」
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