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久しぶりに、2人で眠るために使っている和室で、がっしりと涼に抱きしめられたまま眠った香澄は、気持ちよく目覚めることができた。
目覚めてすぐ、綺麗すぎる涼の顔を目にすることは、まだ慣れない香澄であったが。
「っ!!!!」
まつ毛が女の自分よりもずっと長い涼の寝顔は、彫刻のように美しい。
そんなものを見たら、ライターとしてはこう思ってしまうのである。
(こ、この美しさを言語化して残したい……)
だが、近くには残念ながら書き記せるペンも紙もなかった。
(なんとか、部屋に戻ってこの感動を記したい……!)
そう思いながらも、涼の自分を抱きしめる力が強く、なかなか抜け出せそうにない。
ぐっすり眠っている涼を、自分のせいで起こしてしまうのは忍びない。
でも、この美しさをどうにか残しておきたい。
「やっぱり、残す方が大事」
そう決心して、身じろぎをした時だった。
「ダメだよ香澄」
その声と共に、涼の腕がさらに強くなる。
「残す方じゃなくて、君が残る方が大事だから」
そう言うなり、涼は香澄にキスを数回してから
「おはよう」
と言った。
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