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涼の熱に触れた自分の顔の熱も、同じか……もしくはそれ以上の温度になった気が、香澄はした。
「あ、あの……」
別に初めて触れるわけではないのだけれど、やはり体の本能レベルでドキマギしてしまう香澄だった。
「ね、分かった?僕がどれだけ君が欲しくて欲しくてたまらないかってこと。それなのに……」
優しく穏やかだった涼の目が、ここですっと細くなった。
「君は、僕の想いを疑っただけじゃなくて、僕以外の男に目を向けるなんて……どれだけ君は僕の心を抉れば気が済むのかな?」
「え、えぐ……え?」
「僕は、こんなに君のことしか見ていないのに、たかだかスマホの中の男どもに君を取られてたまるか」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「何?」
「涼先生って…………例えば、なんですけど、ヘローミティとかってどう思います?」
「ヘロー……え?」
それは、巷で大人気の猫のキャラクターの名前。子供向けの商品グッズでは特によく使われている。
この著作権侵害や盗作に関する裁判経験がある涼は、よーくこのキャラクターの会社のことは知っていたが、何故このタイミングでその名前がでるのか、理解に苦しんだ。
「それ、僕たちに関係あるの?」
涼が尋ねると、香澄は大きく頷きながら
「このキャラクターは、可愛いですよね」
と言った。
この言葉が、どうして自分たちの愛の時間に関係するのか、涼にはまっっったく、わからなかった。
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