第1章 SSRって、何?

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 SSR。  何かの略語であることは、察した。  だが、最初のSがそもそも分からない。  涼は、とりあえず思いつく限りの可能性を探った。  生産管理。  政治資金領収書。  生前整理。  正戦論。 (……うん、絶対違う)  特に正戦論は、正当な原因を持つ戦争だけを合法と認めるという理論。  香澄には決して似合わない言葉だ。   (じゃあ……一体なんなんだ……)  そんなことを、涼が持ち前の頭脳をフル回転させている間に、いつの間にか香澄がソファからいなくなっていた。 「あ、あれ?香澄?」  慌てて涼が香澄を探しに2階に上がると、香澄の仕事部屋から声が聞こえた。 「あ、はい、申し訳ございません、すぐに直します」  香澄の可愛い声に、焦りが入っている。 (誰だ……僕の香澄にそんな声を出させる愚か者は。侮辱罪で訴えるからな)  心の中で、香澄の通話相手へ威嚇してから、涼は扉をノックしてから中に入った。 「香澄?どうしたの?」 「あ、すみません。急に仕事が入っちゃいまして……」  ほんの少し涙目なのは気のせいだろうか。  涼は、香澄をそっと抱き寄せながら、頭を撫でてやった。 「まさか、これから?」 「……明日の朝までに仕上げないといけないみたいで」  本当であれば、そんな仕事は拒否してしまえ、と涼は言いたかった。  でも、香澄は自分の仕事にとても厳しいことも、涼は一緒に暮らしている内に知っていった。  だから、涼はそんな時いつもこれだけを言うようにしていた。 「体、辛いと思ったらすぐに休むんだよ」 「はい。分かりました」  それから、香澄ともう1度軽い、おやすみを意味するキスをしてから、涼はその足で拓人の家にやってきたのだ。  1つは、自分と香澄のイチャラブ時間を毎度毎度邪魔をしてくるSSRの意味を聞くために。  そしてもう1つは、香澄に無茶を強いる電話相手の正体を探り当てるために……。
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