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さて、それからほんの数時間後の夜のこと。
「…………あんた、今日私から香澄の休み、ぶんどったわよね」
「………………そうだったかな」
「その恋愛でドロドロっに溶けたスイート脳にコーレグス流し込みたいわ……!」
ちなみにコーレグスとは、島とうがらしを泡盛に漬け込んだ沖縄県の調味料のことで、拓人は仕事中の眠気覚しがわりによく使っていた。
涼は再び、拓人……というより、拓人に押し付けた元自分の家のソファで膝を抱えて座っていた。
「で、何だって?メールではライバルがあいつらだけじゃなかった、的なこと書いてあったけど」
「たっくん、これ、知ってる?」
涼は、顔を膝に突っ伏したまま、すでに準備していた自分のスマホの画面を出した。
「あら。香澄がはまってるアイドル育成ゲームじゃない」
「知ってるのか」
「当然。このゲームのシナリオやりたいんだけどって相談受けたこともあるわよ」
涼は、自分よりも拓人の方が香澄のことを知っている、という事実を受け止めたくなくて、深いため息をついた。
「で、あんたがこれ見せてきたってことは……」
「香澄が…………………………………………」
「だから!長いのよ!何!その気持ち悪い間は」
「香澄が………………僕に言うんだ…………」
「え?」
「この子を推してくれませんか?一緒に推しましょうって……」
「………………あーはいはい」
「僕が、他の女を見ても香澄は何とも思わないみたいなんだ…………」
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