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プロローグ
……そう、一年に一度しか立ち入ることを許されない神の住む山、トニア山。この山にこっそり入り〝美しさの実〟を食べていた者がいたというのです。もちろん山に入ることが許されていない日に、です。人々は神の怒りを恐れつつ犯人を捜しました。そんな中、ひとりの少女が言います。「黒髪の女が山に入るのを見た」と。黒髪の女性は村にひとりしかいません。皆の視線が黒髪の娘に集まります。でも彼女は「その日は村長の息子と会っていた」と言って譲りませんでした。村長は息子に「どちらが真実か?」と尋ねます。息子は言いました。「俺はあんな女となんか会っていない。あいつは嘘つきだ」と。村長はもちろん息子の言い分を信じ、黒髪の娘とその家族を村から追い出しました。ところが……
※以下、火災による汚損のため解読不能。
――カイナ村「トニア山記」より。
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