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倦怠感に身を委ね、ティッシュで指を拭く彼の動きを黒目だけが追う。 「見て! 思ったほど付いてないじゃん」 バスタオルは賢明にもお尻の下にとどまってた。 かなり激しく打ちつけ合ったはずなのに。 刷毛でサッと刷いたみたいな掠れた経血が、欲という赤痕をタオルに残してた。 「上手に出来たね」 私の腰に左腕を絡ませ、無邪気な笑顔で愛しそうに血の痕を撫でる。 上手に出来たねってどういう意味? 余り汚さずにってこと?それとも、セックス自体を楽しめたって意味? 「そうだね」 すぐにどうでもよくなって、追求せずに相づちを打つ。 「いちおう洗わないと。水で洗えば落ちるんだよね?」 彼が降りたとたん、ベッド自体の体積が軽くなった気がした。 ドアを開けたまま、暗い浴室の方に消えていく。 ぱっとライトが点いて、二度しか招かれていない寝室の、浴室から漏れたオレンジ色の灯りがベッド際まで滲みてくる。 ウォールハンガーにシャツとスーツが掛けてあった。 床に放られた方のスーツを拾ってハンガーにかけてから、しわくちゃのシャツを持って浴室に向かう。
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