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二話(シエル)
これが幸せなのだと――ルーに肩を貸すシエルはそう感じていた。ルーの髪を撫でている最中にみつけた、首筋の小さなホクロ。
そんな、ほんの小さな発見にも心がはずむ。
(クク、このホクロは俺だけが知っているんだな。……いや、もうひとつあった。ルーのドレスのファスナーが壊れた時に見えた、太ももの内側のホクロと、顔を真っ赤にしたルー)
『きゃっ、シエルさん見ないで、見ちゃやだ』
『……おう』
ルー、ごめん。しっかり見た後だった。
その時を思い出して、にやけそうな顔を我慢したのは言うまでもない。
心地よい海風を頬に感じ、ルーは疲れたのだろう俺の肩で寝息をたてている。もちろんベルーガも、ルーの膝からおりず眠ってしまった。
(ベルーガ……いまだけだからな。ストレーガ国のことが終わったら、ルーには指一本ふれさせない)
――それで、呪いはどうなっている?
ルーの膝の上で丸まって気持ちよさげに眠る、ベルーガを俺はしばらくの観察した。ふうっ――よかった。呪いの発動はなく、例の発作は起きていないようだ……ホッと息を吐き。スラックスのポケットから懐中時計をだし、時刻を確認してウルラに声をかけた。
「そろそろ休憩にする。ウルラ、下に降りれそうな島はないか?」
「あるじ、北の方角に小さな島が見える」
「北の方角だな。わかった、ありがとう」
俺はガット乗せに乗り隣をかける、ラエルにも声をかけた。
「ラエル、北の方角にある小島に降りる」
「北の方角だね、わかった。ガット、休憩まであと少しだから頑張ってね」
「了解っス!」
その、俺たちの声でルーとベルーガが目を覚ました。
「シエルさん?」
「シエル?」
「ん、起きたのか? ルー、ベルーガ、もうすぐ休憩だ、近くの小島に降りるぞ」
東の夜空は明るくなりかけていた――夜明け方が近い。俺達は休憩を取るため、小さな島におりることにした。
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