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三話
海の上にポッカリ浮かぶ、木が生い茂る小島に私達は降りた。
波打ち際から少し歩いた草むらに、シエルさんとラエルさんはテント、天幕でもはなく――小さめなコテージをアイテムボックスから取り出した。
「左は俺とルーで使うから、そっちはラエルとベルーガ、ウルラとガッドな」
(え、シエルさんと一緒?)
驚く私をよそに、シエルさんとラエルさんの2人はしばらく見つめ合い、ラエルさんが会話なくコクリと頷いた。
「……ふっ、わかったよ、兄貴」
「シエル、いくら恋人だからといって、ルーチェちゃんに変なことするなよ! ぐふふ、おやすみ」
ラエルさんの脇に抱えられながら、子犬ちゃんは茶化しながら笑う。
「ベルーガ、変なこと言ってないで、ちゃんと休めよ。おやすみ」
「兄貴、ルーチェさん、おやすみ」
「お嬢、お休み」
「おやすみっス」
「みんな、おやすみ」
ラエルさん達は右のコテージの中に消えていった、私はドキドキしながら、シエルさんの後に続き左のコテージにはいる。
(温かい……)
まだ春先で朝晩は冷えるのだけど。このコテージの中はあたためる暖炉がなくても、寒くなく暖かかった。
――もしかして魔法?
「ん、どうした?」
シエルさんにこのコテージはどうしたのと聞くと。ストレーガ国の国王陛下からの"プレゼントだよ"と教えてくれた。
これがプレゼント? ……この、コテージの中は寛げるスペースと、ベッドが2つ、トイレとお風呂が完備していた。
それに……いまから、シエルさんと2人きりなんだ、緊張する。
「ルー、風呂沸かしてくるから、くつろいでいて」
「あ、うん」
お風呂場に向かうシエルさんの背中を見送り。私はドキドキしながら、ベッドのへりに座りコテージをみあげ……フウッとため息がもらした。
やっぱ、魔法はすごい――魔導具のランタン、お風呂とトイレ。
1人用のコテージにベッドを2つにしたから、キッチンを置くスペースが取れず、食事は外でみんなで作ると言った。
私はベッドに寝転び。はじまったシエルさん、みんなとの旅を考えていた。ここからストレーガ国までは約5日以上はかかるらしい。
飛ばせば3日でつくのだけど、日中――他の国の上空を許可なく通るわけにはいかない。姿を消すにしても大勢なために、どちらかが魔力切れを起こす……。
『……真夜中の移動が多くなる。まあ、ガットは怖がりだからな、下手して、下に落ちると厄介だ……ここから先はウルラに頑張ってもらう』
『了解した』
この休憩は――福ちゃんをしっかり休ませる為の休憩。ベッドの上で、ウトウトと瞼が落ち眠りに入るまえ……ザワザワ、耳鳴りを感じた。
《……お……ます》
途切れ途切れな女性のような声に目を覚まし、ベッドから体を起こして、辺りを見回しだけど私の周りには誰もいなかった。
(……いまの耳鳴りと声はなに? 夢?)
ウトウトしていたから、夢か現実かがわからない。――もう一度、声が聞こえたらシエルさんに相談しよう。
「ルー、風呂が沸いたぞ。タオルと石鹸は洗面所に置いてあるから、好きに使って」
お風呂の準備を済ませた、シエルさんが部屋に戻ってきた。
「わかった。さっき、シエルさんに渡したカバンを出してもらっていい?」
シエルさんからカバンを出してもらい、下着と部屋着を出してお風呂に向かった。浴室の中は魔法でだしたライトの灯りが浮き、真っ白な浴槽を照らしている。
「あ、猫足のバスタブだわ!」
私は可愛いバスタブに浸かり、十分にお風呂を堪能した。
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