娘の巣立ち

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娘の巣立ち

「じゃあ、お母さん。  今までありがとう。」  先日結婚式を挙げた娘が、実家にあった自分の荷物の移動を終えて、玄関で頭を下げた。 「もう、あらたまった礼なんてやめて。こそばゆいわ。」  母親の金美(かなみ)は、笑顔で応えた。  そんな母に、娘は言った。 「なんかあったら、気軽に電話して。新幹線で片道2時間は遠いけど、電話はすぐにつながるから。」 「ありがとう。甘えさせてもらうわ。」 「それじゃあ……」  娘は行った。  1人娘だった。  門まで出て見送り、一戸建ての我が家に戻ったとき、金美は急に空虚さに襲われた。
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