朝7時、別れの時間

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 あのとき僕はあいつと離れたくなかった。  ずっと一緒に居たくて、別れを先延ばしにしていたというのに、遂にそれも限界に達しようかとしていた。    「お前と離れないといけないみたい」    心の隅っこからそんな台詞が浮かんだけれど、すぐに消えた。  まだ、離れたくない。まだ温かみを感じていたい。  服の袖で、ぐっと涙を拭った。  でも、当然お前は何も言ってくれなくて、無機物みたいに固まったまんまだった。全く寂しそうな素振りを見せない。むしろ、すぐにでも離れろとでも言いたいようにも見えた。お前の気持ちは最期まで分かんなかったけれど。  そして、そんなことを思っていられるのも束の間で、別れのときがやってきた。  お前に抱きついていた腕を解いて、離れた。身体はまだ微かな温かみを感じていたけれど、それすらもほんの僅かな間で冷めてしまう。      「じゃあ、またな」    心の中で呟いた。どうせ、口に出したところでお前は聞かないだろうからさ。  ***  けたたましいチャイムの音と、靴箱に走る生徒たちの駆ける音が交差している。  そんな中、僕は1人、ちょうど門をくぐり抜けたところだった。  あいつと長く居た弊害が出たらしい。  「遅刻ッッ!!」  クラスメートがどっと湧いた。また遅刻かよ、と口々に言う。  「遅刻の理由は何ですか」  先生は教壇の上に仁王立ちで構えて、僕に問った。明らかに呆れ口調だったし、もう僕が何を言うか承知しているような気がする。  「えー、布団から出られませんでした!」  先生の鬼の形相と笑みが混じったなんとも言えない表情を、今でも忘れることはない。      
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