無気力タルト

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見えない壁が沢山ある、そう自覚したのは思春期真っ只中の中学のころ、私はいつも一人だった。 教室で一人悩んでいた。 悩んで悩んで鏡ばかりを見ていた。 鏡を見てはため息をつき、ノートの隅に意味のわからない落書きをした。 思えばこの時から狂っていて、ずっとそこから大人になっても狂っていたんだと思う。 それから、人間関係でうまくいかないこと、距離の詰め方がわからないことなどで私は常に孤立していった。 「お前いつも同じ顔してんな」 クラスメイトの男子に言われたセリフ、全くその通りすぎて、反論する気もおきなくてけれど、話しかけられたことが嬉しすぎて、ただ気づいたら笑ってた。 ニヤニヤと笑う私はさぞかし気持ち悪かったんだと思う。 「座敷わらし」 ついたあだ名は座敷の隅に居座る妖怪の名前だった。 その時からその男子のことが好きになった。 初めて人を好きになったときだった。世界が広くなった気がした。 「おい、座敷わらし」 そう呼ばれるのが嬉しかったし、頭から消しゴムのカスをかけられても、怒ったふりだけしてた。 一人ぼっちの世界を侵食されていく感覚、彼といると胸はドキドキし、うまく話せなくなり、手足に汗をかいた。 「やめてよ」 口ではそう言った。けれど、本心では嬉しかった。一人ぼっちの毎日が終わりを告げたことに歓喜していた。
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