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先輩とは毎日デートを重ねていった。
学校帰りにクレープを食べたり、映画を見たり、ゲームセンターによったりした。
お金はお母さんがお小遣いをくれた。
お母さんは若い時に両親が厳しく、自由に恋愛ができなかったことで後悔をしていた。
「私だって、図書館と教会ばかりじゃなくて、若い時に色んな経験をしてみたかったのよ」
といいながら私にお金を渡していた。
ある日のこと、先輩の家に行くことになった。
マンションの五階、自分の両親はもう少し階数が上のところに住もうかなと考えていたけれど、利便性を考えてあえて五階にしたんだとか、そういうことを話していた。
先輩の家はごくごく普通でけれど整理整頓が行き届いていた。
混沌を絵に描いたような自分の家とは大違いである。
私の個人的な先輩のイメージは無印良品であった。先輩の家もそんな感じで、シンプルでモノトーンだけれど光が沢山入って来るような家だった。
先輩の部屋は狭く、ベッドと机、最低限の物があった。その中でも目をひいたのがアルミでできたイーゼルで小さめのキャンバスが立てかけてあり、描きかけの油絵が置いてあった。
油絵を描いているのに周りが一切汚れておらず、先輩が綺麗好きなのを物語っていた。
「適当なところに座って」
私は先輩のベッドに腰掛けながら、もらった麦茶を飲んだ。
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