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パシリになると心配していたが、そういう心配は不要だったようで、その子達とは時々、色んな事で一緒になった。家庭科の調理実習、体育の組分け、などである。どんくさい私はそのたびに小さな失敗をしていたが、元々、授業を真面目に受けるタイプではない二人には気にもされなかった。
「ピンピンってさ彼氏いるよね」
瑞穂が家庭科の調理実習で作った三色丼を食べながら聞いてきた。
「えっ、そうなのかな……」
「この前一緒に帰ってるところみたもんね」
葵がそれに乗っかってくる
「それは、その、面白いことがあって」
この時、私は入学して半年経ってないぐらいだったと思う。
この間、とあることが私に起こったのだ。
美術コースには元々男子が少ない、私の学年にも二人しかいない、上の学年にも二人、そして、一個上の先輩にはカップルが一組発生していた。そういう事情で上の学年で一人あぶれていたのが、森先輩だ。
身長はスラリと高く180センチほどあり、顔立ちは目元が涼しげで鼻が高い、全体的に塩顔である。
決してイケメンではないが、清潔感が漂っていて、オレンジピールのような独特の男性の香りがする。
「おい、森、こいつ、あまり馴染めないみたいなんだ面倒みてやれ」
学年主任の脇田先生が森先輩に私をそういうふうに紹介したのだ。
余計なお世話だと思ったが、実際クラスには馴染めずに、放課後もモクモクとデッサンをする日々を送っていた。
それから、森先輩と一緒に帰る仲になったのである。
流れというか、運命というかそういうのをその時に漠然と感じていた。
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