無気力タルト

8/18
前へ
/18ページ
次へ
学校帰りのデートに何をするか、それは人によると思う、けれど、私達はもっぱらTSUTAYAでCD選びに凝っていた。 これは森先輩がバンドでドラムを叩くこととも関係している。 森先輩の沢山の音楽を知りたいという欲望が毎日TSUTAYAのCDコーナに足を運ばせたのだ。無限に広がる音楽の世界の一端をつかみたかったのかもしれない。 私は音楽はあまりきかなかったけど、森先輩がセレクトしてくれたお陰できくようになった。 中でもアジアンカンフージェネレーションや相対性理論、マキシマムザホルモン、クラムボンなどが好きだった。 当然だけど、どの音楽も個性的で沈んだ時に聞けば、明るい気持ちになれたし、何より、言葉をあまり持たない私にとって、先輩との会話が音楽を通して広がることが嬉しかった。 「これ、どう思う?」 「わからないけど、ペカペカしてる、あ、なんか途中で雰囲気変わった」 「でしょ、面白いよね」 先輩は私に色んな世界の入口を教えてくれた。音楽もそうだし、絵もそうだっだ。 「俺さ、お絵描き塾に通ってるんだよね、ずっと」 「そうなんだ、すごいね、私は独学だよ」 「今度、見学してみる?」 「うん、する」 先輩といると何をするにも積極的になれたし、勇気をもらえた。学校であまり馴染めなくても、先輩がいればさみしくなかった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加