無気力タルト

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先輩の行っているお絵描き塾は画材屋さんの地下にあった。地下といっても半地下で、明り取りの窓が自然光を取り込んでいるので明るい空間が広がっていた。まるで秘密基地のようだ。 自然光に当てられている様々な置物、石膏像や果物を模った物、素材をかき分けるためのコンクリートのブロックや、鉄パイプなどもあった。興味深々に、見ていくと、ランタンや花瓶、鴨の剥製なんかもある。   それらを眺めていると奥から声をかけられた。 「おや?女の子連れなんて珍しい、森くんの知り合いかね?」 「俺の後輩です。少し見学させてください。絵を習いたいらしくて」 「いいよ、いいよ、丁度塾生を募集していたところさ」 ニット帽を被った太っちょの先生は皆さんから先生とだけ呼ばれていた。 「よろしくお願いします。宮本佳菜子と申します。」 私はお辞儀をして自己紹介をした。 それから、お茶とお菓子を出されまったりしていると、周りの様子が少しずつ見えてきた。 油絵で、戦闘機のようなものを熱心に描くおじさんや、水彩画で静物を描いている社会人のお姉さん。 年齢は幅広く、学生だけというわけでは無かった。 「どういうのに興味があるのかな?油絵かな?水彩かな」 「受験用のデッサンを学びたくて」 私は高校を入学した時点で、どこかの美大に行こうと決めていた。そこで、基礎のデッサンを学びたかったのだ。
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