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第一章 三話 Death Side Pool
彼女がそこに行ったときには、既に誰もおらず、もぬけの殻だったが、もう一度スマートフォンを見て、ニヤリと笑った。
「やっぱり追う側ってのはいいもんだね・・・」
その時後ろから声がした。そこには女子高生が立っていた。その女は、杏奈ちゃーん、と言いながら彼女に近づく。
「やっと来たのか?真希。遅かったね?」
と杏奈が聞くと、
「ちょっと取り込んでてよ・・・」
と真希は答えた。どこか、顔が火照っている。
学校を新村杏奈、瓦真希、美原愛海花、宍原凌矢の四人で出てから、四人は全員別々の用事があるとかないとかで、本拠地のある町、雅浪町に入ってから、すぐに別れた。まだ夜が浅いこの時間帯なのでまだ「まともな人間たち」が機能している。美原、宍原は二人でこの町唯一の商店街、酒村通りへ、瓦は一人で、高校生以下のヤングなヤンキーが集まる、夜桜通りへ力試しに行ってしまった。
「シシは?あいつまたメビウス買いに行ってんの?」
と杏奈が言うと、真希は、いやいや、と笑って言った。
「流石に先回りさせといたよ。愛海花が服買いたそうだったけど無理矢理シシが連れて行ってたけど・・・」
と言いながら真希は何やら鎖のような長いチェーンを取り出した。チェーンを首にぐるぐる巻き付け、メガネを外し、コンタクトレンズを付けた。そして、鉄製の能面を顔につけた。
「杏奈ちゃんも着替えなよ。また彼氏に怒られるよ。」
真希が言うと、彼女は真希を小突きながら、今は元よー、と言って笑った。
「これ暑いんだよねー。」
と言いながら杏奈が取り出したのは、大きな「熊」の顔だった。その顔はモフモフとしていて、それを見た一言目は誰もが可愛いと言ってしまうような物だった。彼女はそれの胴体用のものもつけ、雰囲気は完全にテーマパークで子供と絡む熊の着ぐるみを着た職員だった。しかし、彼女はポケットから、忍者が持つような短刀とクナイを取り出し、その二つをくっつかせて擦り合わせた。辺りには大きな金属音が響き渡り、真希は、やめて!、叫びながら耳を塞いだ。
「でも私、戦闘無理だから、真希。頼んだよ。」
と杏奈が言うと、
「いや、いい加減戦闘くらいできるようになりな。何年人殺しやってんのよ。」
そう言って、二人は笑った。
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