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たった今、授業が始まった。多くの生徒達が眠たそうに席についていく中、たった一人の女子生徒が河川敷に座り込んでいた。それも「座布団」を敷いて。
彼女の尻に惹かれていたのは他校の男子高校生だった。彼女は、お前から喧嘩売ってきたんだからいいよな、と言って彼の上に座った。彼は何も言うことなく、そのまま彼女の体を支え続けた。彼女は一つため息を付いて、白い一本の筒を咥えた。それから手を離し、そのままポケットを弄り、うわ、と言ってから、「座布団」を見た。
「なあ、お前、ライター持ってる?」
彼女の言葉に彼は何も言わぬまま、左側のお尻にあるポケットを指さした。
彼女は、自分で取れよ、とでも言うように大きな舌打ちをし、それを取り出した。その威圧に、「座布団」は小さな声で謝った。
「後、今後からアタシを見かけたら、膝ついて挨拶しろよ。たとえ仲間の前でもな。」
彼女が、ヒヒヒ、と気味の悪い笑みを浮かべて放った言葉に、「座布団」は耐えきれず、
「そんなの出来る訳ねえだろ!俺は学校仕切ってんだよ。そんな立場で女に土下座?笑わせるんじゃねえよ!」
と叫んだ。
彼女は、また同じような表情を浮かべ、チラッと「座布団」を見、遠くの方を見つめて、こう言った。
「あのさ、この世には70億人も人がいるんだ。知ってるか?アタシは授業を受けたことがほぼねえから知らなかったんだけどよ。でも70億人ってすごい数だぜ?アタシらみたいな喧嘩っ早いアホが居るのも当然だよな。でもさ、多分アタシらなんかよりも悪いやつはいっぱいいると思うんだ。なのに近所ではライターやら包丁やら、人が死ぬようなモンが気軽に買えてしまう。これって馬鹿じゃねえか?こうやって一線気にしないやつも居んのによ。」
と言ってライターの火をつけて、「座布団」の服に近づけた。
「おい!やめろよ!死ぬのは嫌だって!分かった。するから!会うたびに土下座すればいいんだろ?するから、するから許してくれ!」
と叫んだ「座布団」に、それでいいんだ、と言うように彼女は笑い火を戻したライターを頭に投げつけ、
「じゃ、また会いに来るわ!『座布団』君!」
そう言って彼女は歩き出した。
「次の時間地理か〜。作戦会議もしたいし、出席するか〜。」
なんて呟きながら。
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