第一章 一話 Gather Here.

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 高校というのは、「社会人への勉強」というモットーの元、時には残酷な事柄も生徒に叩きつける。それは「いじめ」である。 「おい!立てよ!もっと可愛がってやるからさ」 金髪の男が言った。彼の周りに居た男たちは笑って更にそれを鼓舞した。  この学校にも、それはある。 「や、やめてよ・・・」 凌矢は言ったが、まあ止めるはずもなく、そのまま体中殴られ、蹴られ、彼の体の至るところから血が吹き出していた。 途中、教師や生徒がそこを通ったが、誰も何も言わなかった。ただ、一瞬凌矢の方を見て、哀れんだ目をして通り過ぎていった。  時刻は13時。もうすぐ昼休みが終わろうとしていた。 「じゃあ、今日はこれくらいで勘弁してやるよ。ちゃーん!俺は強い男だぞー!」 次の授業の時間が迫っており、凌矢をいじめることに対しての面白さがその集団を通して冷めているのを感じて、満足そうに去っていった。  凌矢にとって、授業ほど幸せな時間はなかった。何より、監修者がいるということが何よりありがたかった。血まみれの彼の顔を見ても助け舟を出してくれる先生は誰一人居なかったが、兎にも角にも、学校生活のうちの大半がこの時間に埋め尽くされてくれていることが、嬉しかったのだった。 彼は斜め前にいる、クラスで一際綺羅びやかな雰囲気を放つ彼女を見た。彼女の方には授業中にも関わらず、数々の目線が向けられていた。流石アイドルである。彼がいじめられているのは彼女のせいだ。彼女が今年度最初の授業の自己紹介で「強い人が好き」とさえ言わなければ、凌矢はこんなことにはなっていなかった。彼女はそれには「いいじゃん。本当に強い人が好きなんだもーん」と陽気に返してきたが、凌矢は彼女を許せるはずもなく、最近は本気で恨んでいた。 「ついてねえなあ・・・」 彼は一人呟いたが、その声が本人が思っている以上に大きかったようで、クラス中の視線が彼に集まっていた。どうかしましたか?、という教師の問に凌矢は、何にもないです。すいません、と頭を垂らしながら謝り、その場を切り抜けた。 斜め前を見ると、悪性のアイドルが、あざとい笑顔でこちらを見つめていた。 彼は、大きく舌打ちをした。
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