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第一章 二話 The Meaning To Exist.
自分の存在というものが、疎ましく感じてしまうことがよく有る。外を見れば相変わらず仕事終わり、学校終わりに酒を飲み、踊り騒ぐ者たちが溢れている。その騒がしさというのは建物についている窓をすべて締め切ったとしても零れてきてしまう程だ。こんなところで遊ぶなんて気が知れない。毎日生か死かのくじを引いているようなものである。多少「生」の方の確率が上がっただけだ。
彼はしばらく煙草を更かしながらそんなことを考えていたが、半分くらいの長さになったところで一つ舌打ちをして、それをJPSと書かれた箱に戻した。そのまま少し固まって、人生ってのは難しいなあ、と言ってまたそれを取り出し、今度はゴミ箱に捨てた。またため息を付いて、彼はクローゼットに向かった。「向かった」と言っても、この物件は古ぼけたビルの一部屋を借りただけのなので、同じ部屋の目と鼻の先にあるのだが。彼はそこから赤い着ぐるみのようなものを取り出し、身につけた。
その姿は、まるでこの世の悪を抹消し、自分のことを「俺ちゃん」とでも呼びそうな、そう、まるでデッドプールのような見た目であった。
彼は足の先から頭までそれをかぶり、自席に置いてあった一枚の紙を手に取った。
「依頼先は・・・桃風通りか。あそこは入りたくないんだよな・・・」
彼がそう言う桃風通りはいわゆる風俗街で、常に様々な男が出入りしている一見幸せな通りだが、同時にその浮足をすっかり掬われて、不幸も多い場所である。
彼はまたしてもため息を付いてから、玄関口にあった短い日本刀を腰に携えた。
「ほんじゃ、一稼ぎ行きますか!」
彼は言葉の強さとは裏腹に、出ていった彼の背中は、やけに寂しそうだった。
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