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プロローグ They Are Exactly Evil.
とある日。それは季節の変わり目、太陽が人類をこっ酷く照らす、余りにも暑い日だった。人々はその暑さには何ら疑問を感じておらず、いつも通り生活を送っていた。
その日の太陽が沈んだ後、空から大きな粒の雨が降り、外で遊んでいた子供たちは家へ帰り、仕事帰りの中年たちも急いで家路についた。やがて外には誰もいなくなり、ひっそりと静まり返った夜になった。
何か嫌なことが起こりそうな、そんな夜だった。
ある町に住む、一人の男がいた。彼の職業は鳶職。低賃金で重労働、柄の悪い職場の連中、と、それまで賢明な生き方をしてきた彼にとって、この職業はとてつもない程合っていなかったが、彼には家庭があった。愛する妻と、二人の子を養うために懸命に働いた。それを守っていくことだけが、彼の生きがいだった。
その日も彼は激務を終え、疲労を抱えながらも、家族に会う事だけを考え、帰路を雨に打たれながら歩いていた。
かなり歩いて、ようやく愛する者たちが待つ家が見えてきたその時、彼のポケットで携帯が揺れた。彼は画面を見、首を傾げながら、電話に出た。
その瞬間、彼はその場に崩れ落ちた。聞いた知らせは、父親の訃報だった。雨と涙で前が見えず、電話が切れてからもその場で全く同じ体勢から、変わることはなかった。
それから何分経ったのだろうか。彼はついに立ち上がった。その足は重く、頭は少しも上がらなかったが、兎にも角にも家族に会いたくて、一歩ずつ歩き始めた。刹那、女性の大きな悲鳴が聞こえた。その声は、この男にとって聞き覚えがあり、何年も前から、様々な距離から、方向から、様々な言葉を聞いた、そんな声だった。彼はその声が愛する妻の今まで聞いたことのない声だと、すぐに分かった。
男は走った。数重なる衝撃に動揺していたが、今、どうにかしておかなければならない問題が、目の前に現れた。
家の扉を開けた。それは彼の抱えた恐怖、不安、そして父親の訃報に対する悲しみの圧に耐えきれず、酷く重くなっていた。
リビングに入ったとき、その丁度向かいにある窓から二、三人ほどの男たちが何か重そうな荷物を持って外に出ていこうとしているのが見えた。更にその荷物が自我を持っており、携帯電話のバイブレーションのように薄く、しかし存在感のある声が聞こえてきたことから、それが彼の家族だと、正確には彼の娘息子なのだとすぐに察した。窓の方向に走り出そうとまさに一歩目を踏み出したその時、彼の足裏に何か粘り気のある、自分の足を止めさせる物があった。恐る恐るその場に目を落とすと、その粘液の正体が分かった。それは「よだれ」だった。愛する者の。彼が、生涯愛すると誓った女が、目をぱっちりと開き、新聞の上で、鼻から口から液体が流れ出、終いには首と胴体を離された状態でその場に放置されていた。
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