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 北の宮では彼女を逃がすきっかけというを作った皇后を闇神自らの手により殺されて以来、その座は空席のままだ。  跡継ぎも第五姫の所為で今はいない。  大臣達は彼女さえ帰ってくればその座(正妃)は埋まるだろうと話していたと噂されていた。  宮を抜け逃亡し、寄りにもよって東の水神と契りを結び、子まで産み落とした女を正妃にするなどとありえない話だ。  だが、こうやって探して連れ戻すように命が下っている。 「姫様。北に戻ろうとは思わないんですか?」  男はあえて聞いてみることにした。  しかし、彼女はそれに答えることもせずにまっすぐ男を見て刀を振るう。  会話すらする気のない白雪に男は舌打ちをした。  北の姫と言えど所詮は人権の無い女だ。国宝と言えど物同然の愛姫にこうも気を使うのすら不服だった。しかも、男である己の言葉にさえ心に届いていない。  それが気に食わない。  男は地面の土を操り白雪を捉えようとする。  覆い被さるように白雪を襲うが土は彼女によって凍らされる。 「チッ!」  男は舌打ちをし、地団駄をふむと大地が揺れ始める。地面は亀裂がはいり山を崩壊する。  崩れる地面なら離れれば男が刀を構えて飛びかかってきた。 「!?」  避けて技を出そうとする白雪だが、足に何かが絡みついていることに気付く。  土が白雪の足に絡み付き硬化し動きを封じ込める。仕方ないとばかりに飛びかかる男の刀を受止め、止めれば男の背中から土が覆いかぶさってきた。
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