2/11
前へ
/67ページ
次へ
 きっと風美や草庵が居たから彼女達任せにしていたのだろう。  そんな二人が別行動になったのは失敗だった。  縁側からの庭園の先から黒い稲津が落ちるのが見えた。雷煉達が戦闘中だ。 「いたぞ!」 「殺せぇ!!」  バンッと襖を開ける音の先には武装している北の兵達。氷で出来た弓を構え一斉に飛ばして来るのを時間を停止させたあと、三人は走りその場を後にする。  時間が動き出すと飛ばした矢は誰もいない縁側の柵へと刺さった。 「!?」  兵達は走って翠達が居たはずの縁側へと向かうが辺りを見渡しても三人の姿は見当たらなかった。  捕虜にされ牢屋に閉じ込められていた西の民達を救出する事は出来たが、流石に大勢を護りながらの戦闘は正直に言って大の苦手だと雷煉は吐き捨てるように言う。  焦がされた左腕は既に感覚はなく機能を果たせなくなった。利き手である右手が生きていて良かったと皮肉に笑ってしまう。  避難をさせる最中に来た広間は炎に包まれている。生き残っている仲間は残り四人。  そのうち一人は重症で動ける状態ではなかった。 「ガ…ッア"…っ!!」  直ぐ隣で戦っていた部下の一人が後ろから槍で背中を貫かれ前で戦っていた敵がトドメとばかりに雷煉の部下の胸部を刀で貫き板挟みとなった。  口から大量の血が吹き出し目からの出血。 「ぁ…ァア"ア"…っ。」  槍により身体が燃え出した部下は声にならない絶叫を上げる。 しかし、このまま死んでたまるかと彼は己を貫く槍と刀を掴んだ。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加