■を着る日

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ダイニングに飛び込む。 「ノースリ解禁!」 「5月は早すぎでしょばか」 ポーズをとったら。 千尋さんに睨まれる。 「いやもういいっしょ?  ほぼ夏だよ?充分暑いよ」 窓の外は快晴。 「近場のデートでしょ?  ノースリ解禁は早くて七月」 「えー、これ着たかったのに。  ノースリってか1部袖くらいあるし」 お気に入りのトップス。 着るのが待ち遠しかった。 「ダメ、早すぎ」 部屋に押し戻される。 一緒に住んでいる千尋さんは、仕事柄、服装のTPOにうるさい。 でも。 その場に合う最大限のおしゃれを教えてくれる。 「カーディガンはダサいから、  下に白い半袖着なよ」 「えー白?  黒が良くない?」 だめだ。 そう言って。 首を振った。 「重すぎ、それこそ暑そう。  ジーンズの色とも合わないし。  オーバーサイズの薄いのあったでしょ。  肘がギリ隠れるくらいのあれがいい」 なるほど確かに、好きなトップスの柄を隠さずに露出は抑えられて、ジーンズとも合う。 軽やかスポーティな感じ。 「靴はどうしよう」 上を脱ぎながら聞くと。 「今日どこいくの?」 ちゃんと考えてくれる。 「中央通りで買い物」 白い半袖。 オーバーサイズの。 あった。 キャミソールも脱ぐ。 「長く歩くならスニーカーか、  ヒール低いのにしな。  オレンジの足首にストラップついてるやつ」 「ん」 半袖の上からお気に入りを着る。 「いい?」 「襟」 言いながら手を伸ばして。 重ねた襟の白の幅を直してくれる。 「ありがとう」 「どういたしまして」 千尋さんは自分の支度を始めた。 長い髪を結って、化粧をする。 丁寧に下地を塗って。 ファンデーションはうっすら。 目の周りには濃いグリーンを。 唇はごく薄いベージュ。 ブラウンのチークはシェーディング代わり。 いつも見とれてしまう。 まつ毛を綺麗に上げた目が。 こっちを向いた。 「時間いいの?」 「よくない!  行ってきます!」 玄関を飛び出す。 晴れ渡った空を見上げて。 目を細めた。 高校2年生。 2DKのアパートで。 訳あって、おしゃれなOLとふたり暮らし。
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