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 二人で会っていれば必ず仲を引き裂くように、聖二の奥さん、桃香から連絡が入った。  聖二の浮気を疑っているわけではない。  妊娠していた彼女は毎日体調が優れず、病院通いが続いている。一人で家にいれば、不安になることもあるだろう。その度に、聖二に連絡を入れていた。  倖弥と会っている時は、聖二は電話に出ないでいてくる。自分を優先してくれるのは有難かった。  しかし、携帯電話は一度切れても何度もかかってきた。ずっと鳴り続ける状態に、倖弥の方が気になってしまってそれどころではなくなる。 「……聖二、まだ鳴ってる」  全く集中できない倖弥を見兼ねてか、聖二は苛立つようにベッドから下りて電話に出た。  倖弥は肌を隠すように毛布に包まる。聞きたくないのに電話の向こうから奥さんの声がした。聖二は、倖弥が聞いたことのない柔らかな口調で彼女と喋る。女性の前では、普段とは違うのだろうか。それとも、大切な奥さんだから特別なのか。  聖二が電話を切ったと同時に、二人の視線が重なった。その後に続く言葉が倖弥にはすぐにわかった。 「悪い、ユキ」 「うん」  急ぐように脱ぎ捨てた服を着て、聖二は帰る準備を始めた。  毛布に包まったまま倖弥は身体を小さく丸める。もう裸でいる必要はないのに、服を着る気にはなれなかった。 「じゃあ、行くよ」  聖二が口づけをしてきたので、身体を起こして離れたくないというように彼の腕を掴んでしまった。すると、倖弥の腰を引き寄せ、深く口づけてくる。舌を絡め合い、貪るように互いを求めていた。毛布を自分で剥ぎ取った倖弥は、縋るように身体を寄せた。  だが聖二は、名残惜しそうに唇を離す。急に倖弥は、恥ずかしくなった。 「……ごめん、聖二」  聖二が足りないと欲しているのを知られたような気がして、身体中が熱くなる。顔を俯かせるしかなかった。 「また、明日な」  聖二の手が愛しむように倖弥の頬に触れ、唇を親指でなぞられた。痺れるような感覚に身体が震える。だが、その後すぐ、聖二は部屋を出て行ってしまった。  裸で一人、ベッドの上にいる自分は、すごく惨めに感じた。  何度目だろう。こんな風に途中で聖二がいなくなるのは。もっと傍にいたいのに、その望みは叶わない。バンドで一緒にいるのとは違う。二人の貴重な時間が奪われていた。  こう何度も続くと、黒い感情がふつふつと沸き上がるのだ。
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