羽毛恐竜の庭

1/22
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
 一馬は夢を見た。羽毛恐竜の夢だ。おじいちゃんの図鑑で見た羽毛の生えた恐竜たちはそれはそれは美しくて、一馬は一瞬で夢中になってしまった。お風呂に急かされたので途中のページまでしか見られなかったけれど、五歳の一馬の想像の世界をいっぱいに埋め尽くすには十分だった。いつもと違うおじいちゃんの家で、慣れない和室の慣れない布団だったのに、あっという間に眠ってしまい、そして極彩色の夢を見た。  朝になって、顔に射す光で目を覚まし、一馬は布団の中で姿勢を変えてうつ伏せになって、縁側の向こうの庭を見た。既に初夏の眩しい光に照らされた庭の、ちょうど咲いているアジサイの前を、一匹の羽毛恐竜がひょこひょこと歩いて行くところだった。まるで夢の続きのように。大きな爪のある力強そうな足、ツヤのある黒い風切り羽が目立つ腕、歩くごとに前後に揺れる白い羽毛に覆われた頭。ちょうどダチョウのようなシルエットだが尻尾は長く、ピンとまっすぐ後方斜め上に伸びていて、その先には美しいコバルトブルーの飾り羽が陽を浴びてキラキラと輝いている。 「ヴェロキラプトルだ!」と一馬は跳ね起きた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!