羽毛恐竜の庭

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 あんまり慌てたものだから、シーツが足に絡まって、一馬はぽてんとこけた。焦って足をじたばたと動かし、畳の上を転がるように縁側まで行って、四つん這いになって首を外に突き出した。  草の匂いと、土の匂いが立ち昇った。小さなアブのような虫が飛んで、一馬の鼻をくすぐった。横を向くと、通り過ぎて行った恐竜の後ろ姿があって、あのきれいな青い尾羽が開いたり閉じたりしているのが見えた。恐竜は鼻面をアジサイの花に突っ込んで、花の匂いを嗅いでいるように見えた。 「トロオドンかなあ?」と一馬は思った。「シノルニトサウルスかもしれないな。それともシノサウロプテリクスかな?」  一馬はまた飛び起きて庭から離れ、ゼンマイ仕掛けの車のように走り出した。一馬が寝ていた和室の隣は、洋間のリビングになっている。そこに飛び込んで行くと、テーブルには既におじいちゃんとお父さんが座っていて、コーヒーを飲んでいた。 「おお、おはよう」とおじいちゃんが言った。
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