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あかりの撮影が無事終わり、ヨリの番となる。
「居ると気が散る」との理由で追い出されたあかりは施設を見学する事にした。
ちょうどメイクアップアーティストとバイヤーが喫煙所へ入っていくのが視界に入り、嫌味も言われたがお礼は言おうと近付く。
「あんな喪女を使って再生回数稼ごうなんて、ヨリも必死だよな。顔しか取り柄ないし、もうイロコイするしかねぇか」
振り掛けた手が止まった。
「もうヨリはオワコンよ。散々擦られたネタをルックスの良さでどうにかしようとか、ヒネりがないわ」
「あれ、協力してやるんじゃなかったっけ? お友達なんだろ?」
それぞれ携帯電話をいじり、あかりの気配に気付いていない。
「利用できるうちは、ね。さっきの撮影でうちの商品が映るようにしたの。映えない子があんなにキレイになる化粧品、問い合わせ殺到かしら? まぁ、あの子は化粧慣れしてないだけで素材は良かったけど」
咥え煙草を灯すカチカチという音はあかりの導火線にも火を付ける。カッと身体が熱くなった。
「ひでぇーーって俺も同じ。彼女のスタイル良くなかったら、あのドレスは着せなかった。お互い、旨味が薄ければ引き受けないよな、こんなクソつまらない企画」
指先がパタリと落ち、ドレスを握る。煙と陰口を笑いながら吐く2人に怒りが抑えられず、あかりは急いで庭へ戻った。
「思い付きました! 庭での撮影もいいんですけど教会で撮るとかどうですか? 映えませんか?」
勢い良くドアを開け、ヨリに向かいながら進言する。
「突然なに? カメラマンは帰ったよ」
ヨリは動画のチェックをしており、目線を落としたまま思い付きをあしらう。あかりの突拍子もない言動に対して抗体が出来つつある。
「念のため聞いておく。どうして教会に行きたいの? 教会は愛を誓い合う神聖な場所、映えたいだけで行くのは良くない」
発言の成分には倫理観とロマンチストの要素が多分に含まれ、そのうえ正論だ。
「でも私、再生回数を稼ぎたくて」
「はぁ、何度も言わせないで。お姉さんはそういうの気にしなくていいから」
「……いや、その、じゃあ、この姿を見て貰いたいなぁって」
「じゃあって何? 誰に見せたいの? 企画かバレるのだけは勘弁してよ」
企画内容の露見をヨリは一番警戒している。もしもバレたらご破算、これまでの作業が水の泡。
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