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「孫がご迷惑をお掛けしました!」
「こちらこそ嫁入り前のお嬢様にドレスを着せてしまい、大変申し訳ありません!」
などと謝罪し合う。そのうち段々と当のあかりが居ないのに虚しくなってきて、ヨリと夫婦は我に返る。
「とりあえず、あかりさんを呼んできます」
ヨリがあかりを呼びに行くと言うと、部屋の場所を祖父が教え、祖母をお茶を淹れるという見事な連携が取れた。
「……っぷ、あははっ」
畳へ額を擦りつけて距離を縮める斬新なコミュニケーション方法にヨリは笑ってしまい、祖父母もつられて笑う。
するとその笑い声にあかりが反応し、二階から慌てて降りてきた。なにやら冊子を抱えている。
あかりにじっと顔を見られ、ヨリは真顔にリセットされた。
「お姉さん、どこ行ってたの? それは?」
「両親の仏壇にお線香をあげていました。これはお見合い写真です」
あかりはつまらなそうな声でヨリの前に見合い写真が積む。
この新たなる急展開の気配に夫婦がそっと退出していった。
「ーーご両親、亡くなってるんだ?」
ヨリのあかりへの抗体は仕上がりつつある。見合い写真を積まれても角を揃えてやり、余裕だ。
「はい、私が小学生の頃に交通事故で。祖父母が私を育ててくれました。あ、お線香あげている所はバッチリ撮影しておきましたからね」
結婚の挨拶ではなくウェディングドレスを着た報告のみされ、天国にいる両親はさぞリアクションに困ったに違いない。ヨリも後から線香をあげようと決める。
「ご夫婦は優しい人達だと思う。お姉さんのこと大事に想ってるよ」
「……はい」
あかりはここ数年帰省をしていない旨は話したが、理由をまだ伝えていない。
「しかし、ドレス着て見合い写真見るのは攻め過ぎじゃない?」
「私、お見合い結婚を勧められるのが嫌で実家に寄り付かなくなったんです。私を心配してくれているのは分かるんですが、お見合い結婚って敷かれたレールの上を進むみたいで……」
「いや、お姉さんに限っては一度レールの上を歩きなよ」
暴走機関車が何を言うか、思わずヨリから本音が漏れた。
これだけの家構え、縁談が多く持ち込まれるのも納得する。それにあかりもウェディングドレス補正がかかっているが、黙って動かなければ令嬢に見えない事もないか。こう、目を細めればーー
薄目のヨリに促され、あかりはパラパラと冊子に目を通し始める。あかりも撮影後の身の振り方を考えておかなければならない。
「あ、この人お医者さんですって、凄いな」
「オレの方が年収高い」
「この人、なかなかイケメンじゃないですか?」
「は? 断然オレの方がカッコいいでしょ?」
「こちらは28歳ですって!」
「オレは24歳」
「……そんな張り合わなくても」
あかりが目に留めた男性を片っ端から却下するヨリ。
「はぁ? 張り合ってないし! 事実を言ったまでだよ」
「そんな事言われたら、ヨリさんとお見合いするしかないですよ! ヨリさんとならお見合いしてもいいかも!」
あかりが発した拍子に障子が開く。
お茶とお菓子を持ってきた老夫婦が仲間に入りたそうに立っていた。
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