育成2

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 ーーその後、夫婦に夕食を食べていくよう強く勧められ、美味しい料理についついアルコールへ手が伸び、結局は宿泊する運びとなる。 「こういう場合、部屋は別々にするよね? お姉さんの部屋に布団を並べて敷くなんて……」  年頃の男性ならば飛び付くシチュエーションに風呂上がりのヨリは引いていた。モーゼの海割りがごとく、布団を切り離す。 「ラッキースケベが撮れるかもしれませんよ」 「お願いだからビデオ持って恐ろしい事、言わないで。ここに来る間も撮影任せたけど、しっかり撮れてるよね?」 「あ、確認してみましょう!」  あかりの部屋は上京した年齢の抜け殻みたく、ファンシーな小物やぬいぐるみが溢れる。カーテンはピンクのハート柄だ。  ヨリはあかりの少女時代を避けつつ、ビデオカメラをテレビに繋ぐ。 「ひま」 「マンゴスチン」 「ひま」 「マンドリン」 「ひま」 「マンチカン」 「しりとりする気あります?」 「ありません」   高速道路運転中の記録が流れる始め、2人は肩が触れる近さで鑑賞する。  しりとりはヨリの居眠り運転を防止する目的で行われるが、あかりが撮影の練習をしたいだけ。人の家を撮り回るのに及び腰となるヨリに代わり、彼女はカメラ役を申し出た。  途中に寄ったサービスエリアでは人気配信者か、ウェディングドレス姿のあかり、どちらがコーヒーを買い出しにいくか揉めた場面もある。 「久し振りにパシリやらされたなぁ」 「ヨリスにバレないかヒヤヒヤしてましたが、全然バレませんでしたね!」 「うるさい!」  和室でヨリと祖父母が話している間も、あかりは外の風景を撮っていた。   ドレスを見られないようにか、カーテンに隠れて近所の農家と接触を試み、ヨリの車の音を注意され、早く祖父母を安心させてあげなさいと言われてしまう。 「車はごめん」 「いいんです! あんな車、初めて乗りました。帰りは私が運転しても?」 「させるはずないでしょ! ドレス事件忘れた?」  壁に吊るされたウェディングドレスは買い取りが決定。 「あはは、やっぱりダメですよね」  ノリとツッコミの仕草でヨリがあかりの髪を払うと、ジャンプーの香りが重なる。  あかりの目線で切り取られた今日という日は何処かくすぐったい。  そして映像はあかりによる祖父の紹介へと移る。 「こちらが私の祖父です」  と、ここから数分間、祖父によるゴルフクラブ自慢が差し込まれ、あかりはウェディングドレスで素振りをする。  祖父の指導でプロゴルファーを目指した時期もあるスイングスピードは早い。フォームの崩れがなく身体の軸がぶれていない。  企画趣旨へはOBだが、あかりの一面は知れた。 「あー、疲れた」  ひと汗流し、すっきりした顔付きのあかりと祖父は縁側から空を見上げる。 「……あかり、見合いをしろ、見合いしろとうるさく言って悪かった」 「ううん、私こそ。意地を張って帰らなくてごめんなさい。さっきお爺ちゃんが集めてくれたお見合い相手、全部見たよ」 「おう、どうだった? 皆さん良い人だったろ?」 「うん。でも、ヨリさんには敵わないや。ヨリさん本人も言ってたけど」 「そうだな。ヨリ君は身長があるし、飛距離が出そうだ。彼、ゴルフはやるのかい? 一緒にやりたいな。ゴルフはーー」  再びゴルフの話題となり、あかりは早送りのボタンを推す。 「ちょっと、まだ観てるだろ?」 「も、もうゴルフの話しかしてませんよ? お婆ちゃんへもインタビューしたので観てください」
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