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カメラは祖母が料理をする台所へ。
久し振りに帰ってきた孫の為、腕を振るう気合がが割烹着の袖をめくる様子に表れる。
「あ! 唐揚げ作ってるの?」
「あかりの小さい頃からの好物だもんね。沢山揚げるよ」
祖母の秘伝のタレを揉み込んだ唐揚げは柔らかく、ジューシーで美味しい。しかもこの唐揚げにはエピソードがあると、夕食時にヨリは本人から教えて貰う。
祖母が小学校の運動会にお弁当を作っていった際、あかりの同級生達のお弁当は洋食がメインで驚いたそう。
いつも煮物や焼き魚を入れていた祖母は唐揚げの作り方を一生懸命勉強し、翌年の運転会へ持っていた。あかりはたいそう喜び、徒競走で一等賞に輝いたのが今も忘れられない、と。
こんなイイ話を聞かされては、ヨリも呑んでしまう。
唐揚げがこんがり揚げられていく中、あかりと祖母の会話は続く。
「ヨリさんは何が好物なんだい? 材料があれば作ってあげたいんだけど」
「ヨリさんの好物? メロンソーダーって言ってた」
「飲み物じゃなくて」
「ピザならマルゲリータ」
「ピザ限定じゃなくて……あんた、知らないのかい?」
「知らない」
「あら、そんな顔しないの。知らないってことは知る楽しみがあるのよ。全然知らないなら沢山知れて楽しいでしょ?」
温かい交流にヨリの目頭が熱くなる。
あかりの無鉄砲な性格が憎めないのは、祖父母の深い愛情を注がれたものだからかもしれない。
あかりの根底は真っ直ぐで一生懸命だ。
「ねぇ! オレが悔しくも感動している最中、お姉さんは何を探してるの? お婆ちゃん、とても良い事を言ってるよ?」
ヨリは鼻をかみ、押し入れへ頭を突っ込むあかりにビデオを見ろと言う。
「ゲーム」
「ゲーム?」
「うーん、このあたりにーーあった!」
収納物の雪崩れを起こしてまで引きずり出すのは、レトロゲーム界隈で死にゲーとして名高い【アトランティスの宝】
アトランティスの宝は100のステージをようし、クリアするのは暇人もしくはクソゲーマニアと言われる。
「このゲーム、クリア出来なくて。でもヨリさんならクリアできるかなって」
「今? このタイミングで?」
「人気ゲーム実況配信者ですよね?」
こうも煽られたら仕方がない。ヨリは大人気ゲーム実況配信者なのだから。
「お姉さん、今夜は眠れると思うなよ!」
2人がラッキースケベに遭遇することはなく、徹夜でアトランティスの宝を採取するのであった。
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