育成3

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「みんな、今回の件は本当に申し訳ない」  ヨリは興奮する関係者、事態の収集に動くスタッフ等へ深く頭を下げた。 「準備が整い次第、生配信で釈明するから。もう少し踏ん張ってくれ」  配信者生命を脅かされる中、ヨリは怖いくらい冷静で声に自信を宿らせる。  こうして社長がどっしり構えてくれれば社員も落着きを取り戻せ、指示と判断を仰ぐ事ができ、滞っていた空気が循環されていく。  それぞれが担当の持ち場についたのを確認し、ヨリはあかりを住居スペースへ連れて行った。 「騒がしちゃってごめんね?」  こんな形で招かれると思っていなかったヨリの部屋。モデルルームのように生活感がなく、最低限の家具しか置かれていない。  広い空間なのに、あかりは息苦さから肩で息をする。この件でヨリを支持する人達にどんな感情を抱かれるか、身を持って感じた。 「大丈夫? オレはお姉さんが写真を横流ししたなんて思っていないから安心して?」 「じゃあ誰が?」 「さぁ? 誰だろうね。こういう足の引っ張り合いなんて珍しくないし」  ヨリはキッチンでコーヒーを淹れるとひとつカップ、もうひとつは紙コップへ注ぐ。 自分を貶めた犯人に興味をあまり興味を示さない。 「でも育成は中止かな」  大きな冷蔵庫に背を預け、深く息を吐いた。 「これからどうなるんですか?」 「配信でお姉さんとの企画を説明するよ」 「ヨリスは分かってくれますよね?」  オープンキッチンのカウンターへ乗り出す、あかり。 「さぁ、どうかな。ガチ恋勢多いし。そういうアプローチをしてた」  確かにネットニュースのコメント欄は荒れに荒れていた。ヨリへの失望と共にあかりに向ける中傷も多い。 「ーーだとしても、ヨリさんが私なんかと結婚するはずないし、付き合うにしても可愛い人やキレイな人のはずです! 写真を見ればそのくらい分かりますよ! 目元にモザイク入ってますが」 「あのさ、そういう事を自分で言ってて悲しくない? お姉さんなんかって言い方、やめなよ」  ヨリは肩を竦め、呆れた。 「か、悲しいですけど本当の事です」 「可愛いとかキレイとかは別として、付き合うのも結婚するのもオレが決める事。お姉さんが勝手に決めないで」 「決めつけるなんて、そんな」 「これはオレの問題。お姉さんに関係ない」  半分以上残っていたコーヒーをシンクにこぼし、蛇口をひねる。あかりは排水口に飲み込まれたコーヒーへ自分を重ねた。
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