番外編 藤ヶ谷琉との出会い

13/16
前へ
/93ページ
次へ
俺は思わず、雫を抱きしめてしまった。 さっき知り合ったばかりの男が、アパートに送って来て、上がり込んで、抱きしめて、ヤバイだろ。 俺の気持ちはマックスだが、雫にとってみたら、今の俺の存在は雫の中にはこれっぽっちもない。 見も知らぬ男性に抱きしめられて、なんて思っただろう。 俺は雫から離れた。 「すみません、これじゃまるでストーカーですよね」 俺は戸惑いを隠せなかった。 でも、雫はとんでもない言葉を口にした。 「そんな事ないです、藤ヶ谷さんと一緒にいると安心します」 雫は俺に笑顔を向けてくれた。 俺は思わず「また、会って貰えますか」と雫に言ってしまった。 雫は「はい、よろしくお願いします」と言ってくれた。 俺は心の中でやったあと叫んだ。 「今度、休みにドライブ行きませんか」 俺は雫をデートに誘った。 「はい、喜んで」 雫は笑顔を俺に向けてくれた。 しかし時折見せる悲しそうな顔が忘れられなかった。 雫はまだ、別れた男を忘れられないでいるのか。 まさか、送ってくれた男性を探していたが、その男、えっ?俺を意識してくれているのか? 本当の事を言うべきか。 今更言えないだろう。 俺は迷っていた。 俺は雫をあの夜、抱いたんだから、どうするべきか考えが及ばない状態だった。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

494人が本棚に入れています
本棚に追加