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行き着く先、沁みる優しさ
玄関を出て、そのまま当てもなくただ歩き続ける。
最寄り駅から電車に乗って降りて、ついさっきも見たばかりの改札口を出ると、いつの間にか雨が降っていた。
すぐ隣にコンビニがあるけど、わざわざ傘を買うのは勿体ない。そんなことを思えるくらいには、私はまだ冷静なんだと気づくと、なんだか笑えてきた。
虚しい。やるせない。ほんと、嫌になる。また無我夢中で歩き続けた果てに、辿り着いたのは、何故かあの路地裏のカフェだった。
「いらっしゃいませ……って、えっ、ちょっ、染谷!? めっちゃびしょ濡れじゃん! 傘持ってなかったのかよ」
ちょっと待ってて。――そう早口で告げた井上くんは、すぐさまタオルを持ってきてくれた。
「はい。取り敢えず、これで拭きな。あとコートも脱いで。そのままだと風邪引くから」
指示されるままに、大人しくスプリングコートを手渡すと、彼はどこからかハンガーを取ってきて、窓辺に吊るした。そして――。
「あったかいのがいいよな? 今、ホットコーヒー淹れるから、ちょっと待って」
「……ありがと」
私は辛うじて、そう呟いたのだった。
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