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◇
一か月後――。
「ねぇ、花純。なんか最近、綺麗になった?」
「ん? そうかな」
友人の一人にそんな言葉をかけられ、私はそっと微笑して小首を傾げる。
そう見えているとしたら、それは間違いなく彼のお陰だ。
「いいなぁ、ちゃんと愛されてて。羨ましい~。私なんか、二人目産まれてからさっぱりだよ」
「私の方こそ羨ましいよ」
――二人どころか、一人だって産めないんだから。
そのとき、ピロリンと鳴ったスマホの通知音。メッセージを表示させると、沸々と湧き上がりかけた熱が、急激に冷やされるのを感じた。
『アフォガート、あります』
「ごめん、私そろそろ行くね」
私は逸る気持ちを抑えて席を立ち、夜のチェーンカフェを後にしたのだった。
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