アフォガート

2/2
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 その対価というように、会えば身体を求められるようになったが、そんなものは、なんてことない。――だって、コイツの中でいくら出そうが、絶対に間違いなんて起きないのだから。  今後も俺の性欲処理道具として、都合良く使わせてもらうまでだ。  やがて、カーテン越しに窓の外が白み始めると、俺はいつも花純(かすみ)のために、アフォガートを作る。  薄く黄色がかったバニラアイスを見ていると、何故か花純の柔肌が思い浮かぶ。  何も知らない、哀れな女。蝶よ花よと大切に育てられた、純真(じゅんしん)無垢(むく)なお嬢様。  そんな花純(バニラ)に底なし沼のような、深い茶色のエスプレッソを垂らし込むと、それは徐々に色を変えて染まっていく。  始めは上辺から、ゆっくりと広がるだけ。だが、エスプレッソを全てかけ終える頃には、花純(バニラ)はグラスの中で溺れ染まるのだ。  ――可哀想な花純……。  俺はグラスの中の花純(バニラ)と目を合わせ、うっそりと微笑む。 「もっともっと……染まる(溺れる)まで愛してあげるからな、花純……」  この歪んだ愛の果てに、何が待っているのか。俺はまだ知る由もない――。               ―おわり―
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!