第三章

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「全然迷惑なんて事ないよ」 やっぱり無理、怖くて真壁くんの胸に飛び込むことなんて出来ない。 《本気にしたの?》 この言葉が頭の中を駆け巡る。 アメリカまで行ってこの言葉を言われたら立ち直れない。 期待しちゃいけない、私は自分に言い聞かせた。 「そろそろ仕事に行く時間ですよね」 「静香と喋ってると、あっと言う間に時間が過ぎちゃうな」 「本当に」 「じゃあ、行ってくるな、静香はおやすみだな」 「はい、行ってらっしゃい」 「わあっ、いいな、毎日言ってほしいな」 「それじゃ、電話切る時言いますね」 「そうじゃないよ、俺、静香にプロポーズしてるんだけど……」 「えっ?」 「じゃあ、行ってくるな、考えといてな、プロポーズの返事」 スマホは切れた。 真壁くんは次から次へと嬉しい言葉を言ってくれる。 私は本気にしちゃダメと自分に言い聞かせても、期待しちゃう自分が顔を出す。
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