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「わかってるよ、ただ、お前は将来、この会社を継いで社長になるんだろう、その時は決まった婚約者がいるんじゃないか、もし、また倉田に同じような思いをさせるなら、これ以上構わないでやってくれないか」
そんな過去が静香にあったなんて、全く知らなかった。
終業時間になり、俺は静香を食事に誘った。
「静香、駐車場に車を停めてあるから、帰る支度出来たら、駐車場に来て」
「ごめんなさい、ちょっと気分が悪いので、今日は帰ります」
「静香!」
静香と呼び止めた俺の声は届かなかった。
私は振り向きもせず、会社を後にした。
あの忌まわしい過去から、未だに前へ進めない。
全ての男性が、私を騙そうとしていると思ってしまう。
しかも、真壁くんは私より十五歳も年下で、この会社の御曹司。
ゆくゆくはこの会社を継いで、社長になる人だ。
そんな人が、私みたいな冴えないアラフォーを好きになるわけがない。
遊びか賭けか、どっちにしても坊ちゃんの道楽だろう。
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