ちぎり絵

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ちぎり絵

 寝たきりになった祖母が、ベッドの上で、色とりどりの和紙で作ったちぎり絵は、祖父母の家のあちらこちらに飾られていた。あるものは小さな掛軸に、あるものは短歌を添えて。  私が形見に貰った絵は、青空を背景に咲く、一輪の向日葵の絵で、その花びらの一枚一枚は、今にもそよぐ風に揺れ動きそうな繊細な曲線を描き、背景の空は、千切った和紙が幾層にも重ねられ、奥行きが出、唯一無二の色彩を作り出していた。  柔らかで温かみのあるちぎり絵という芸術。それは、祖母にとてもよく似合っていた。
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