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やっとこさ授業が終わってお昼休みだ。
教室がざわざわしはじめる。
そんな中、あたしはブチギレてた。
こっちにケツ向けて屁ぇこいてるネコがひたすらムカつく。
「おいこら、山下!! なんじゃこりゃあ!」
広げたノートを山下に突き付けても、すっとぼけた顔していやがる。
「いいかんじに描けたと思わね? ケツの穴が特にうまくいった」
「ネコちゃんのお尻の穴なんか見たくないよ! そんなに描きたきゃ、自分のノートに描きゃいいじゃん! なんであたしのに描く!?」
慈悲で貸してやったらアダで返された。
これでキレないのはお釈迦様でもムリ。
なのに、どんだけ怒鳴っても山下には届かない。
両手を上に向けてのヤレヤレポーズ。
あたしがおかしいみたいな態度すんな。
「オレのアートを理解するにゃ、高原はまだまだガキすぎたか」
「アートってなにさ! ただの落書きじゃん!」
「バッカだなぁ、壁に描いた落書きに億単位の値段が付くのが、現代アートの世界なんだぜ?」
「そこらへんの中学男子がノートに描いたネコちゃんは、現代アートとかいう奴では断じてありません~!」
あたしは言い切った。
現代アートとかいう奴のことは丸っきり知らないけど、きっと正しいに違いない。
山下の奴だって、そんなもんに詳しいわけがなかった。
美術の時間にふざけてて、先生に怒られるなんてしょっちゅうだし。
なのに、不埒な落書き犯はあいかわらず余裕の表情だった。
「高原にもそのうち価値がわかる時が来るだろう。オレに感謝するオマエの姿、今から目に浮かぶぜ」
「それ、幻覚ですから」
そもそも、感謝されるのはノートを貸したあたしの方なんだけど。
さらに追求しようと言葉を練ってたら、山下の野郎はなぜか勝利の笑みって奴を向けてきた。
くるりと背中を向けて、「アディオス」とかほざいて去っていく。
え? 勝手に勝った気になって勝手にどっか行くってアリなの?
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