98人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
〜品川区大崎〜
目黒署を出発した刑事課の羽多野と三池。
山手通り317号線で品川区へ入り、りんかい線大崎駅横の交差点で信号停止した。
「嫌な事件ですね、羽多野先輩」
「確かに、あんな現場は初めて見たぜ。看護師2人は、一旦正気に戻ったらしいが、自分達がやった惨状を見て気絶し、以後は本当に精神崩壊しちまいやがった」
「無理もないでしょう、気が付いたら、引き千切った赤ちゃんの足を握ってたなんて、自分でも頭おかしくなりますよ」
淳一と紗夜に現行犯逮捕された2人は、そのまま精神科で診断を受け、中野にある警察病院へ入院となった。
「こいつは、覚えてないしか言わないし。おかしな事件です。さっさと対策本部へ渡して、忘れましょう」
「バカ、うちの管轄で起きた事件だ、被害者と加害者の身内の対応は、正直キツいぜ。捜査もやるしかないだろう」
後部座席には、手錠を掛けた速水医師がいた。
呆然としたまま、2人の会話も聴こえない。
「んん?」
右車線にかなり近寄って止まったBMW Z4。
運転席の三池がそれに気付く。
「先輩、やけに近くないですか?」
「何が?」
こっちを向いた三池の顔を見た瞬間。
「バシュ❗️」
BMWの開いた窓から撃ち出されたモノが、サイドガラスを貫き、三池の後頭部から眉間に抜け、羽多野の額から後頭部をも抜けて、左のサイドガラスに突き刺さった。
「ガシャン!」
握った黒手袋の拳が右のサイドガラスを砕き、その手から中へ何かが投げ込まれた。
信号が青に変わり、音を立てて387馬力のスーパーエンジンが火を吹く。
あの1発は、完全に2人の命を止めた。
動かない車に苛立ち、後続車の運転手がクラクションに手を掛けた時。
「ズドーン💥❗️」
爆音と共にガラスや2人のカケラが周囲に飛散し、車体が浮き上がった。
「ズシャン!」
地に戻った車の内部は炎に包まれた🔥。
その数秒後…「ドガーン💥」
燃料タンクが爆発した。
爆炎と黒い煙が立ち昇る。
大混乱に陥る周囲の車や人々。
警察や消防、報道陣達が着くよりも早く。
SNS上に、現場の動画が投稿された。
〜葛飾区京島〜
新龍会本部ビル。
スマホを見ていた神林。
その映像に、笑みを浮かべる。
「お帰り、ムーミン」
ノックをして、女性が入って来た。
「神林様、お客様達がお揃いです」
「飲み物でも差し上げてください」
「畏まりました」
立ち上がり、スーツを着る神林。
(さて、始めましょうか)
最初のコメントを投稿しよう!