【4】刃

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〜品川区大崎〜 目黒署を出発した刑事課の羽多野と三池。 山手通り317号線で品川区へ入り、りんかい線大崎駅横の交差点で信号停止した。 「嫌な事件ですね、羽多野先輩」 「確かに、あんな現場は初めて見たぜ。看護師2人は、一旦正気に戻ったらしいが、自分達がやった惨状を見て気絶し、以後は本当に精神崩壊しちまいやがった」 「無理もないでしょう、気が付いたら、引き千切った赤ちゃんの足を握ってたなんて、自分でも頭おかしくなりますよ」 淳一と紗夜に現行犯逮捕された2人は、そのまま精神科で診断を受け、中野にある警察病院へ入院となった。 「こいつは、覚えてないしか言わないし。おかしな事件です。さっさと対策本部へ渡して、忘れましょう」 「バカ、うちの管轄で起きた事件だ、被害者と加害者の身内の対応は、正直キツいぜ。捜査もやるしかないだろう」 後部座席には、手錠を掛けた速水医師がいた。 呆然としたまま、2人の会話も聴こえない。 「んん?」 右車線にかなり近寄って止まったBMW Z4。 運転席の三池がそれに気付く。 「先輩、やけに近くないですか?」 「何が?」 こっちを向いた三池の顔を見た瞬間。 「バシュ❗️」 BMWの開いた窓から撃ち出されたモノが、サイドガラスを貫き、三池の後頭部から眉間に抜け、羽多野の額から後頭部をも抜けて、左のサイドガラスに突き刺さった。 「ガシャン!」 握った黒手袋の拳が右のサイドガラスを砕き、その手から中へ何かが投げ込まれた。 信号が青に変わり、音を立てて387馬力のスーパーエンジンが火を吹く。 あの1発は、完全に2人の命を止めた。 動かない車に苛立ち、後続車の運転手がクラクションに手を掛けた時。 「ズドーン💥❗️」 爆音と共にガラスや2人のが周囲に飛散し、車体が浮き上がった。 「ズシャン!」 地に戻った車の内部は炎に包まれた🔥。 その数秒後…「ドガーン💥」 燃料タンクが爆発した。 爆炎と黒い煙が立ち昇る。 大混乱に陥る周囲の車や人々。 警察や消防、報道陣達が着くよりも早く。 SNS上に、現場の動画が投稿された。 〜葛飾区京島〜 新龍会本部ビル。 スマホを見ていた神林。 その映像に、笑みを浮かべる。 「お帰り、ムーミン」 ノックをして、女性が入って来た。 「神林様、お客様達がお揃いです」 「飲み物でも差し上げてください」 「(かしこ)まりました」 立ち上がり、スーツを着る神林。 (さて、始めましょうか)
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