【3】草吹甲斐

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〜TERRA〜 第10スタジオ。 TERRA-TVのミュージック番組が始まった。 「皆さんこんばんは、ザ・ミュージック!司会の山本リサです。毎週最新曲を生放送でお届けしているこの番組も、ついに100回目を迎えました〜❗️」 派手な音楽とプロジェクションマッピングが、お祝いムードを盛り上げる。 スタジオにいる150名の客席からも、盛大な拍手が起こる。 「ありがと〜。そして、なんとこの記念すべき放送に、あの2人が、新曲を披露してくれます。ご紹介します!今や世界に誇る天才ピアニストの、篠田譜真さんで〜す!」 ベージュのタキシードに、枯れ葉模様のネクタイが、季節感をあらわしている。 「そして、歌は勿論、シンガーソングライターの中嶋愛衣さん!」 シースルー気味のベージュのドレスに、可愛いブラウンのサングラス。 リハーサル通りに、盲目を感じさせない動きで、定位置に立つ。 「お二人が一緒にステージに立つのは、これがなんと2回目ということですが?」 「そうですね、ただ前回は突然のことで、焦りましたけど、今回はシッカリ準備してきましたので、大丈夫と思います…よね、愛衣さん?」 「急に振らないでよ💦…でも、はい。この季節にぴったりの、曲ができたと思います…あれ?何か答えがズレてるかな?」 「いえいえ、大丈夫ですよ〜可愛いから何でもOKです。ですよね?」 大きな拍手と声援が飛び交う。 この時、譜真の絶対音感は、微妙な声の低さを感じていた。 (何か…おかしい) 中嶋自身も、立ち位置の微妙なズレと、音程に気付いていた。 「では、よろしくお願いします。譜真&愛衣さんで、『Autumn of lovers.』」 プロジェクションマッピングが、秋の景色を映し出し、3D CGの枯葉が舞う。 優しい音色が流れ出すと直ぐに、秋風の様に透明で、美しい声が歌い始めた。 スタジオ中が、そしてテレビの前の視聴者達が、心に染み渡るメロディーと歌声に、日頃の忙しさを忘れて、秋を感じていた。 「ラブさん、視聴率42%です❗️」 その脅威的な数値を聞きながら、ラブは中嶋の変化を心配していた。 (彼女にしては声の伸びが足りない…) 「医療機関に待機指示を!歌が終わったら、スモークで中嶋さんを消してピアノをメインに」 曲が終わり、大歓声が湧き起こる。 そんな中、ラブが心配した通り、中嶋愛衣が倒れていた。 速やかに医療班が運び出す。 コントロールルームから飛び出して行くラブ。 「リサさん、会話はなしで、次のチムグクルをお願いします」 耳の通信機で連絡した。 (いったい何が?) エレベーターホールで、ストレッチャーに横たわる愛衣を運ぶ医療班と合流したラブ。 意識のない愛衣の手を握る。 (バイタルが不安定…心臓か?) 「慎重に、ノルアドレナリンを投与、体温低下に注意して。体内出血はなし、至急心エコーとCTを」 「はい」 ラブは触れることで、その容体を感知する能力を持っていて、そのデータをアイに送り、解析させていた。 (やはり心臓が危ない) 「血圧は最低レベルを維持させて、人工心膜の準備を! オペは、私がやります」 「第1オペ室準備完了してます」 テレビを観ていた医療機関副部長の月島風花。 「風花さん、ありがとう。助かるわ」 (さてと、アメリカで移植した心臓を拝見) オペ室に入ると、直ぐに麻酔科医が麻酔を効かせ、最速の開胸手術が始まった。
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