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〜TERRA〜
第10スタジオ。
TERRA-TVのミュージック番組が始まった。
「皆さんこんばんは、ザ・ミュージック!司会の山本リサです。毎週最新曲を生放送でお届けしているこの番組も、ついに100回目を迎えました〜❗️」
派手な音楽とプロジェクションマッピングが、お祝いムードを盛り上げる。
スタジオにいる150名の客席からも、盛大な拍手が起こる。
「ありがと〜。そして、なんとこの記念すべき放送に、あの2人が、新曲を披露してくれます。ご紹介します!今や世界に誇る天才ピアニストの、篠田譜真さんで〜す!」
ベージュのタキシードに、枯れ葉模様のネクタイが、季節感をあらわしている。
「そして、歌は勿論、シンガーソングライターの中嶋愛衣さん!」
シースルー気味のベージュのドレスに、可愛いブラウンのサングラス。
リハーサル通りに、盲目を感じさせない動きで、定位置に立つ。
「お二人が一緒にステージに立つのは、これがなんと2回目ということですが?」
「そうですね、ただ前回は突然のことで、焦りましたけど、今回はシッカリ準備してきましたので、大丈夫と思います…よね、愛衣さん?」
「急に振らないでよ💦…でも、はい。この季節にぴったりの、曲ができたと思います…あれ?何か答えがズレてるかな?」
「いえいえ、大丈夫ですよ〜可愛いから何でもOKです。ですよね?」
大きな拍手と声援が飛び交う。
この時、譜真の絶対音感は、微妙な声の低さを感じていた。
(何か…おかしい)
中嶋自身も、立ち位置の微妙なズレと、音程に気付いていた。
「では、よろしくお願いします。譜真&愛衣さんで、『Autumn of lovers.』」
プロジェクションマッピングが、秋の景色を映し出し、3D CGの枯葉が舞う。
優しい音色が流れ出すと直ぐに、秋風の様に透明で、美しい声が歌い始めた。
スタジオ中が、そしてテレビの前の視聴者達が、心に染み渡るメロディーと歌声に、日頃の忙しさを忘れて、秋を感じていた。
「ラブさん、視聴率42%です❗️」
その脅威的な数値を聞きながら、ラブは中嶋の変化を心配していた。
(彼女にしては声の伸びが足りない…)
「医療機関に待機指示を!歌が終わったら、スモークで中嶋さんを消してピアノをメインに」
曲が終わり、大歓声が湧き起こる。
そんな中、ラブが心配した通り、中嶋愛衣が倒れていた。
速やかに医療班が運び出す。
コントロールルームから飛び出して行くラブ。
「リサさん、会話はなしで、次のチムグクルをお願いします」
耳の通信機で連絡した。
(いったい何が?)
エレベーターホールで、ストレッチャーに横たわる愛衣を運ぶ医療班と合流したラブ。
意識のない愛衣の手を握る。
(バイタルが不安定…心臓か?)
「慎重に、ノルアドレナリンを投与、体温低下に注意して。体内出血はなし、至急心エコーとCTを」
「はい」
ラブは触れることで、その容体を感知する能力を持っていて、そのデータをアイに送り、解析させていた。
(やはり心臓が危ない)
「血圧は最低レベルを維持させて、人工心膜の準備を! オペは、私がやります」
「第1オペ室準備完了してます」
テレビを観ていた医療機関副部長の月島風花。
「風花さん、ありがとう。助かるわ」
(さてと、アメリカで移植した心臓を拝見)
オペ室に入ると、直ぐに麻酔科医が麻酔を効かせ、最速の開胸手術が始まった。
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