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〜警視庁対策本部刑事課〜
19:00。
全員がそれぞれの調査を終え、まとめた。
「では、対策会議を始める。咲」
「皆んなお疲れ〜。何か収穫あったかな? 紗夜と淳は、大変だったみたいだけど…」
今回の釈然としない事件に、マスコミや世間からの批判も重なり、イライラしている咲。
「ではそれから報告します」
紗夜がタブレットをメインモニターに繋ぐ。
「何だこりゃあ?」
いきなり映った惨状に、戸澤が声を出す。
「高嶺に話を聞きに行ったんじゃねぇのか?」
「今朝の総会で、高嶺真純が正式な財閥トップの後任者に選ばれちまったもんだから、大番狂わせで、マスコミも政界もバタバタだ。とても話を聞ける状況じゃなくてな」
一度自宅マンションへ帰り、シャワーで血を流し、着替えて出て来た2人。
「高嶺真純の妻、高嶺志穂が入院している病院へ行ったんです…」
紗夜が感じたものは、皆は想像できないが、映像の惨状から、ショックは大きいと分かる。
「志穂ってご婦人は、何か病気なの?」
察しながら、いつもの調子を保つ咲。
「いえ、早産で運ばれた様です。さっきの惨状は、その赤ちゃんがついさっきまでいた集中治療室です。突然2人の看護師が、3人いた未熟児を…」
紗夜を手で止め、淳一が代わった。
「凶器も使わず、手で引き千切りやがった。俺が着いた時にはもう手遅れで。ありゃあまともじゃねぇ。凄いばか力で、1人抑えるのがやっとだった」
無抵抗の未熟児を、看護師2人が惨殺。
さらに…
「考えたくもないわね。逮捕されたのは、その看護師2人と、産婦人科医と聞いたけど?」
それは、淳一には分からない。
「はい。産婦人科の速水医師。人気のある医師だった様ですが、突然患者をレイプしました。こちらも凄い力で、看護師達の加勢で何とか現行犯逮捕しました…」
「紗夜、1人で抱え込まないで。何を感じたの?分からないかも知れないけど、私らはあなたを信じてるから」
皆んなも頷く。
「速水医師は、狂う前に志穂さんの長…赤ちゃんを診察していました。偶然とは思えないんです。退院する2人と私はすれ違い…もの凄い邪気を感じました。初めて感じるくらい強くて、悍しいモノ。私の右手もそれに反応して、留まっていたなら、どうなっていたか」
ブルブルっと珍しく身震いする紗夜。
そっと土屋が熱いお茶を差し出す。
「ありがとうございます」
「顔色が悪いわ。咲さん、別の話にしましょ」
「そうね、でも紗夜。そいつは、あなたしか対処できないモノだと思うわ。2人は、その事件に集中してください」
「はい。そうするつもりです」
決して怯えたりはしない。
答えた紗夜の瞳は、怒りに燃えていた。
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