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そこへ、珍しい客が来た。
「何この雰囲気は?」
「凛さん、どうしてここへ?」
「ラブは手が離せない状況だし、そこのイカつい人に呼ばれたのでね」
「豊川さん、どうして凛さんを?」
「土屋さん、どうして俺だと…💧」
「………」全員暗黙の理解。
(そんなにイカついのか?…全く)
野獣と言われたのは、莉里の口の悪さのせいだと思っていた豊川であった。
「み…みなさん、これですよ、これ」
自分は違うとばかりに、モニターに写真を映し出す昴。
「何かの…刃? 何なのこれは?」
「高嶺寛三を殺した凶器だ。高嶺の胸部大動脈を切断して、ヒルトンホテルの階段にブッ刺さってた」
「チタンか?」
戸澤の見立てである。
「チタンは固く美しい。でも刃としては弱く、この大きさで、コンクリートに刺さる様な強さはないわ」
袋に入った現物を、豊川が凛に投げる。
受け取り掌に出した。
「厚さ0.12mm。それ以上でも以下でもない。日本の名刀に使われた技術の応用よ。実際に見たのは初めてだわ」
爪を当てて、切れ味を確かめる凛。
「並の鋼鉄結晶オーステナイトと、焼入れで発生する非常に硬い鋼鉄結晶マルテンサイト。日本刀の刀身に熱処理を行った時、鋼鉄の中でオーステナイトがマルテンサイトに変換されるの。この境界線に、超微粒子のダイヤモンドを含ませたものがこの刃よ」
「日本刀の刃にダイヤを?」
「確か…カイ・クサブキ」
「日本人の殺し屋か?」
凛の素性を知っている淳一。
「技術者よ。12才でこれを開発したIQ230の天才。父親は帝都医療化学研究所の主任。臓器売買で稼いでいた白真会の資金援助で、バイオテクノロジーの研究を」
「白真会って言えば、新龍会に潰された中国マフィアだったな」
当時を知る富士本。
「これを使った殺人は、新龍会の暗殺者。連続している爆破も恐らく彼女の仕業ね」
「お…女か」
予想外と見えて、久宝が呟く。
「正体は誰も知らないけど、闇社会の噂では女性らしい。白真会を潰した際に、カイ・クサブキの両親は犠牲になり、彼は新龍会が連れ去ったと聞いてるわ」
「つまり、その殺し屋は新龍会の手先ね?」
「それは分からないけど、可能性は高い。日本の闇社会の話はこれが限界。貴女の彼に聞いた方が早いかもね。じゃあ、くれぐれも気をつけて」
「彼って、あのねぇ…💦」
「あら、違ったかしら? じゃあね〜」
「おぉ、サンキュー凛さん」
軽く手を振って出て行く凛。
「ラブのマネージャーって、何者かしら」
不思議に感じる咲。
「草吹 甲斐、見つけました!医学や科学的論文が沢山ありますね。少し調べてみます」
昴の携帯が鳴った。
「彼の論文でも、見つけた頃かな? TERRAのIQ240を行かせるわ」
「えっ?」
それで切れた。
それから少しして、月島 風花が、やって来たのである。
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