【3】草吹甲斐

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そこへ、珍しい客が来た。 「何この雰囲気は?」 「凛さん、どうしてここへ?」 「ラブは手が離せない状況だし、そこのイカつい人に呼ばれたのでね」 「豊川さん、どうして凛さんを?」 「土屋さん、どうして俺だと…💧」 「………」全員暗黙の理解。 (そんなにイカついのか?…全く) 野獣と言われたのは、莉里の口の悪さのせいだと思っていた豊川であった。 「み…みなさん、これですよ、これ」 自分は違うとばかりに、モニターに写真を映し出す昴。 「何かの…刃? 何なのこれは?」 「高嶺寛三を殺した凶器だ。高嶺の胸部大動脈を切断して、ヒルトンホテルの階段にブッ刺さってた」 「チタンか?」 戸澤の見立てである。 「チタンは固く美しい。でも刃としては弱く、この大きさで、コンクリートに刺さる様な強さはないわ」 袋に入った現物を、豊川が凛に投げる。 受け取り掌に出した。 「厚さ0.12mm。それ以上でも以下でもない。日本の名刀に使われた技術の応用よ。実際に見たのは初めてだわ」 爪を当てて、切れ味を確かめる凛。 「並の鋼鉄結晶オーステナイトと、焼入れで発生する非常に硬い鋼鉄結晶マルテンサイト。日本刀の刀身に熱処理を行った時、鋼鉄の中でオーステナイトがマルテンサイトに変換されるの。この境界線に、超微粒子のダイヤモンドを含ませたものがこの刃よ」 「日本刀の刃にダイヤを?」 「確か…カイ・クサブキ」 「日本人の殺し屋か?」 凛の素性を知っている淳一。 「技術者よ。12才でこれを開発したIQ230の天才。父親は帝都医療化学研究所の主任。臓器売買で稼いでいた白真会(はくしんかい)の資金援助で、バイオテクノロジーの研究を」 「白真会って言えば、新龍会に潰された中国マフィアだったな」 当時を知る富士本。 「これを使った殺人(しごと)は、新龍会の暗殺者(アサシン)。連続している爆破も恐らく彼女の仕業ね」 「お…女か」 予想外と見えて、久宝が呟く。 「正体は誰も知らないけど、闇社会の噂では女性らしい。白真会を潰した際に、カイ・クサブキの両親は犠牲になり、彼は新龍会が連れ去ったと聞いてるわ」 「つまり、その殺し屋は新龍会の手先ね?」 「それは分からないけど、可能性は高い。日本の闇社会の話はこれが限界。貴女のに聞いた方が早いかもね。じゃあ、くれぐれも気をつけて」 「って、あのねぇ…💦」 「あら、違ったかしら? じゃあね〜」 「おぉ、サンキュー凛さん」 軽く手を振って出て行く凛。 「ラブのマネージャーって、何者かしら」 不思議に感じる咲。 「草吹(くさぶき) 甲斐(かい)、見つけました!医学や科学的論文が沢山ありますね。少し調べてみます」 昴の携帯が鳴った。 「彼の論文でも、見つけた頃かな? TERRA(うち)のIQ240を行かせるわ」 「えっ?」 それで切れた。 それから少しして、月島(つきしま) 風花(ふうか)が、やって来たのである。
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