【1】連続爆破殺人事件

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【1】連続爆破殺人事件

〜東京都文京区〜 19:40。 大塚にあるマンションのエレベーターを、叩くように押し続ける男。 東京都 監察医務院の監察医、山崎(やまさき) 茂雄(しげお) 45歳。 もう20年の熟練者である。 東京23区内で発生した、全ての不自然死の死体の検案及び解剖を行い、死因を明らかにする。 年間検案数14000体で1日平均38体、解剖数は2000体で1日平均6体。 東京23区内における全死亡者数の約18%、つまりは約6人に1人が、原因不明の病気や事故で死亡していることになる。 6階の廊下に着いても落ち着かない様子で、周囲を気にして解錠に手間取る。 ふと、足元に小さな宅配便の箱があることに気付き、片手で持って中へ入った。 その僅か数秒後。 「ドドーン💥💥」 ドアと窓は吹き飛び、爆炎が廊下とベランダから勢いよく噴き出した。 〜港区台場〜 警視庁が設けた30階建ての凶悪犯罪対策本部。 その3階にある、刑事課の電話が鳴った。 「はい警視庁刑事課!」 刑事課長、鳳来(ほうらい) (さき)が受け、スピーカーに換える。 「文京区地下鉄丸の内線、大塚駅近くのマンション6階で、爆発発生。入居者は現在調査中。対策本部に出動願います」 「了解、直ぐに行くわ」 脚を組み、デスクに腰掛けていたミニスカハイヒールの咲…の目が、入ってきた豊川と合った。 「あれは…監察医務院に勤める、山崎茂雄だ」 「豊川さん、何で知ってるんですか?」 豊川(とよかわ) 勝政(かつまさ)。 4階にある鑑識・科捜研の部長である。 問いかけたのは、刑事課の分析・追跡専門のOAオタク、神崎(かんざき) (すばる)。 「ついさっきまで、一緒に飲んでいたからな」 「話は後よ、戸澤と桐谷、現場に行って。例の連続爆破殺人事件の可能性が高い」 「了解。しかし今朝、高嶺(たかみね) 宗治(しゅうじ)がやられたばかりだぜ」 「文句たれてないで、行くわよ。豊川さん…行きますよね…酒臭いですけど🍶」 「あ…あぁ、もちろん頼む」 戸澤(こざわ) 公紀(きみのり)。 元公安の切れ者。 桐谷(きりたに) 美月(みつき)。 元CIA諜報員で、(さき)に負けないくらいのミニスカハイヒール刑事(デカ)。 「車は私が」 桐谷を先頭に、出て行く3人。 「これで5件目か…」 刑事部長の富士本(ふじもと) 恭介(きょうすけ)が呟いた。 入れ違いで、紗夜と淳一夫婦が帰って来た。 「また爆破事件か?」 宮本(みやもと) 淳一(じゅんいち)。 刑事課のベテラン刑事。 「高嶺ワールドトレーディングで聞き込みしたけど、あまり良い評判はないみたい」 宮本(みやもと) 紗夜(さや)。 幼少期から最近まで、盲目の期間を過ごした彼女は読心能力を持ち、富士本が育ての親の心理捜査官である。 「紗夜さん、またファンレターが来てました」 土屋(つちや) 香織(かおり)。 数々の要人秘書を務め、訳あって刑事課に入った部長秘書兼刑事であり、戸澤の妻でもある。 心理捜査官 紗夜の活躍は、アメリカでの活躍含め有名となり、人気のある存在となっていた。 「あちゃ〜参るわほんと💧」 デスクの受付箱に溜まったレター。 新しいものの差し出し人にサッと目を通す。 「人気者は辛いですね。咲さんとこにも、たくさん来てますけどね…請求書が」 「うるさい、昴! しかし…半分は記憶ないのよね〜。部長、経費で何とかお願いね」 少々、酒癖の悪い咲であった。
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