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【5】反逆する細胞
〜警視庁対策本部〜
15:00。
刑事課に緊張感が張り詰めていた。
あり得ない来客。
花山武道警視総監。
彼でさえこちら側にいた。
「では、捜査状況を教えて下さい」
「連続爆破殺人について、咲課長より説明を」
(えぇーいきなり私に振るの⁉️)
唐突な本題に、富士本が通常通り指名した。
(焦る咲の心理を読み、笑いを堪える昴)
「違いますよ富士本さん。高嶺寛三と高嶺宗治の殺害についてです。ですよね絹峰さん?」
花山が助け船を出し、普通に問いかけた。
東京都公安委員会長、絹峰 総司。
法務省直下の公安調査庁ではなく、東京都警視庁を管理し、時には審査する組織の長である。
「お久しぶりです花山警視総監、確かに高嶺宗治は、連続爆破殺人と同じ手口ですから、同じかもしれませんが、高嶺財閥は、我が国の貿易の要であり、早急に犯人グループを逮捕せねばなりません」
硬い様で、話すと柔らかな物腰に、少し拍子抜け的な皆んな。
「実はまだ我々も混乱してましてね。幾つかの事件が、輻輳している様なのですよ」
そう言って富士本を見る花山。
「今も4人が、今朝から続いて発生した爆破殺人へ、2人は護送中に襲撃された事件へ出ている次第です」
「それは、東邦大学医療センターの事件ですよね? 高嶺の事件とは関係ないのでは?」
(どうでもいいって言うのか?こいつ💢)
「咲さん💦」
昴の囁きが噴火を止める🌋。
「それが…その産婦人科に、高嶺真純の妻である志穂と、未熟児で生まれた長男がいて、丁度退院するタイミングで、起きた不可思議な事件でして、うちの宮本紗夜が、現場で居合わせて、その…」
「読心術…ですか? 噂は聞いています。つまり、何かを感じたのですね。なるほど…実はある筋から、あの病院に、闇の噂も聞いていますので、関連の可能性はありますね」
そこで刑事課の電話が鳴った。
素早く咲が動く。
「はい警視庁刑事課、どうしました?」
スピーカーに切り替える。
「大田署の中江ですが、羽田空港でニューヨーク発のNJA109便が爆発し、死傷者が出ています。対策本部の出動をお願いします」
「羽田でまた爆発💥⁉️ 直ぐに行くわ!」
「昴、私と一緒に。部長、本庁への応援要請をお願いします」
「分かった。咲、気を付けてな」
急いで出て行く2人。
静観していた絹峰。
「どうやら、私は邪魔ですね。花山さん、進展があったら教えて下さい。今日は失礼します」
「すまないね、わざわざ来て頂いたのに」
「いえ、皆さんを頼りにしてます」
花山が見送り、付き人2人を連れて出て行く。
富士本が、不思議そうな顔で眺めていた。
「査察じゃありませんよ、富士本さん。因みに彼は、私の娘の夫なのです」
戻った花山が、種明かしをした。
なるほど…と肩の力が抜けた富士本。
しかし、事態は混乱を極め、警察の威信にかけても、早急に犯人を特定する必要があった。
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