100人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
3人の登場に、驚く刑事課のメンバー。
ことに、生ラブは初めてでドキドキの久宝💓。
「皆さんお久しぶりです」
「あらら、たくさん並べたものね」
「私もまた来ちゃいました」
モニターに映された昴のレポート。
ラブは、そこに関連性を見出していた。
「今日はどうかしましたか?」
強い味方に、期待が膨らむ富士本。
知らなかった全貌を知り、風花も感じていた。
中嶋愛衣は、ただの実験台だということ。
そしてその中心にいる、草吹甲斐を。
「実は関連深い事実を知らせるためと、あることを確かめたくて来ました」
「助かるわ〜正直なところ、怪しいのは分かっても、決定打がなくてね〜参ってたのよ」
咲もこの3人の実力には、何度も助けられ、頼りにしている。
「かなりマズイ状況ね、アイ映して」
凛の通信で、対策本部のシステムに侵入したアイが、15分割された映像を映す。
「ロシア、韓国、中国、イタリア、アメリカ、フランス…錚々たるメンバーね」
「桐谷、誰なのよ?」
「さすが元CIAね。こいつらは、各国の黒社会に蔓延り、それでいて国を回している重要人物よ」
「成田、羽田、関西、中部、福岡と、うまくバラバラに入国し、既に帰国した者もいます」
凛に続き、そう告げたラブ。
柔らかな声ではない。
「つまり…入国した目的を果たし、それに満足したってことですね」
急に険しい表情になった久宝。
その目が土屋をチラッと見る。
「桐谷さん、それは報告が終わってからに」
久宝に反応しかけた桐谷を、ラブが制した。
目を見て頷く2人。
「他には何だ?ラブさん」
淳一もその雰囲気を感じていた。
「羽田の爆発で殺されたのは、客室乗務員とオペラ歌手の白川 奏恵、それと夫で演出家の白川 優吾」
「何だと⁉️」
顔に似合わずオペラ好きの豊川。
「私がアメリカから呼んだのよ…。2人の娘である中嶋愛衣こと、本名白川留衣。彼女の心臓が危なかったから。まさかあれに、草吹甲斐が関わっていたなんて…思いもせず」
「中嶋愛衣って、あの盲目のシンガーソングライターの?…あ、そうか、彼女はTERRA-MUSIC所属でしたね」
愛衣と譜真のデビュー曲『誓い』は、昴の目覚ましソングになっていた。
「彼女の心臓は、よく出来た偽物。いつ異常を来すかわからない、ヤツの試作品」
「アメリカへの渡航歴が多いのは、そこで違法な臓器移植を行なっていたためです。ワシントンD.C.にある、『Human Creation Institute.』。最先端のバイオプリンティング技術を保有し、表向きは人工血管やバイオスキンなどの開発で医療に貢献している研究所。でも、裏では直属の病院で、世界中の有力者達から多額の金を貰って、違法な臓器移植をしている悪の組織」
「人類創成研究所…か。CIAにいた頃、聞いたことはあるわ。調査は禁じられていたけどね。なぜ風花さんが知ってるの?」
「私のいた国際医療テクノ大の友達が実習に行って、研究所専用のアパートに住み、色々ヤバい話を聞かされてね。半月もしない内に帰って来たわ」
「臓器提供者の情報は明かされないし、有力者御用達となれば、見て見ぬふりもやむなし」
「いざと言う時、世話になるかも知れないからな。金持ちや政治家が考えそうなことだ」
土屋と戸澤が、怒りを抑えつつ推測する。
「中嶋愛衣が心臓移植をしたのが、研究所が経営する病院。そして、そこにいたのが彼」
アイが病院のシステムに侵入し、やっと見つけた映像に、草吹甲斐がいた。
「でもラブさん、それだけで確証は…」
口を挟みかけた紗夜が、風花の心から、その理由を聞いた。
「ステージで倒れた愛衣は、瀕死の状態でした。私が開胸手術をし、あの巧妙な作品を修正したの。あれは、人から貰った心臓ではなく、人工的に造られたもの。そして、そんなことができる人物は、甲斐しかいない」
怒りと同時に、微妙な心理を感じる紗夜。
「だとしても微妙ね。甲斐の技術がなければ、愛衣さんは助からなかっただろうし、他に似た患者がいても、助けたのは事実よね」
「咲さんの言う通り。闇で売買されている臓器よりは、まだマシかも知れないわね」
桐谷の言葉に、皆も複雑な思いが過ぎる。
「ダメダメ!何言ってんの! たまたま成功してるけど、中には失敗もあるんじゃないの? 人の命を実験台にしてるのは許せないわ❗️」
「なるほど…」
昴のレポートと、現場写真を眺めていた凛。
「なるほど…じゃないわよ❗️」
「この書き連ねた爆破殺人と、2件の特殊な武器を用いた暗殺を眺めてて、思い出したわ」
「えっ?」
「神林尚人は、謝皓然を殺すために遣わされた、元暗殺者。彼には双子の妹がいてね。名前は神林夢眠。ムーミンって呼ばれてたわ」
「む…ムーミン? マジで?」
「皓然は、中国武術の達人。甘く見ていた夢眠は、彼女の強さに敗れたのよ。しかし皓然は、2人が騙されていることを知り、殺さなかった」
「それから、新龍会の一員に?」
「神林尚人はね。妹の夢眠は、騙したアメリカンマフィアに単身乗り込んだ。派手に爆破しまくって、死んだと聞いていたけど…生きてたみたいね」
決してそれは、喜べるものではない。
厄介な敵が、明らかになったことを意味した。
最初のコメントを投稿しよう!